Domaine Petit Poucet – Chap.02

畑に植えた果樹の苗木を覗き込むジェラール

今、畑の周りに果樹や色んな植物の木を植樹しているんだ。自分だけではわからないから、専門家に植物を選んでもらって、生態系活性化をしようとしてるんだよ

Gérard Blaess / ジェラール ブレス

抜栓して数日の経過をぜひ見てほしいワインたち

今回も再入荷ワインのご紹介をしたいと思います。

前回の入荷時に初めて紹介した造り手、フランス アルザス地方のドメーヌ プティ プセの2018年が再入荷してきました。

エチケット(ラベル)に描かれたゴロゴロした石の絵が印象的なドメーヌですね。

このドメーヌ プティ プセの2018年のワインたち…結構キャラクタがしっかりとしていて、やんちゃなところもあるのですが、実はとても評判が良かったので、嬉しいことにすごく早いタイミングで売り切れてしまいました。

そんな折、ドメーヌ プティ プセのジェラールを訪ねてみると、なんとまだ同じヴィンテージのストックがあるではないですか!

ということで、しっかり確保してきましたので、あらためてご紹介します!

  • オーセロワ プルミエ パッサージュ 2018
  • ピノ グリ STZ(エス テー ゼッドゥ) 2018
果樹が花咲く季節

まずは、オーセロワ プルミエ パッサージュ 2018 です。

オーセロワはと言えば白い花やヨーグルトの香りが特徴的な品種ですが、このプルミエ パッサージュもそういった特徴を備えつつ、同時にこのワインならではの個性も備えています。その個性を一言で言い表すとすれば、「奔放さ」です。

いわゆる揮発酸のニュアンスがありつつ、熟成感のある香ばしさと、品種の特徴である華やかさが、重なりあっていきいきとした表現力を持ったワインになっています。

前回入荷時と比べると熟成も若干進んで、揮発酸のニュアンスが感じられにくくなり、その他の要素を前面に感じられるようになってきています。力強かったボリュームも少し落ち着いた印象です。

このワインは、すごく奔放なワインですが、同時にとても複雑です。ビシッとベースを支えるミネラルの硬質さがしっかり感じられ、じっくり向き合って飲むことで、色々な味わいが出てきます。

抜栓してすぐよりも2日目や3日目、場合によっては1週間して、ワインのベースに持っているミネラル感や果実の風味が、より美しく、よりシャープに感じられるようになります。

抜栓してすぐももちろん美味しいんですが、じっくりと時間をかけて向き合ってみるというのもオススメです。

ジェラール ブレス畑にて

続いて前回も大人気だったピノ グリ STZ(エス テー ゼッドゥ) 2018 です。このキュヴェは、畑の面積が小さいドメーヌ プティ プセのなかでも、さらに小さい畑のワインなので、極少量の入荷しかありませんでした。

さて、このSTZは、グラン クリュ(特級畑)であるシュタインクロッツに由来するイニシャルで、ある意味で「普通でない」造りをしているこのワインが、アペラシオンを取得してグラン クリュ(特級畑)を名乗ることが困難なため付けられています。

「普通でない」というのは、ピノ グリという多くの場合には白ワインとする品種を赤ワインのように果皮と果汁を浸漬させるマセレーションを行って造られているからです。

ピノ グリのグリは、「グレー」の意味で、果皮に色素があり、このマセレーションをすることでワインはロゼがかった色調になりますが、単なるロゼの色調ともまた違うトーンの色調になっています。

通常のロゼというと「赤が薄まったピンク」ですが、このワインは「薄まった赤に黄色が加わったサーモンピンク」の色調です。このちょっとキュートでちょっと大人っぽい色調は、このワインの味わいのキャラクターとも合致します。

このワインも、揮発酸があったり、ピチっとした発泡感があったりはしますが、グラン クリュ(特級畑)由来の力強いミネラル感と熟した果実味が、時間の経過とともにどんどんと噴出してきて、大人っぽいような味わいでいて、同時にキュートな表情を見せる、表現力豊かなワインとなっています。

このワインに関しても抜栓してぐよりも2日目、3日目、1週間と時間をかけることで、ワイン本来の持っている表現力にフォーカスが定まってきます。

+ 造り手詳細

Auxerrois 1er Passage / オーセロワ プルミエ パッサージュ

ヴィンテージ:2018
タイプ:白
産地:フランス アルザス地方
品種:オーセロワ 100%

オーセロワと言えば、白い花のようなチャーミングさやヨーグルトのようなまろやかな酸味が特徴として感じやすいブドウですが、このプルミエ パッサージュはふくよかなボリュームと力強さがあり、香ばしさ、強烈なミネラル感、わずかな発泡感、若干の揮発酸があいまった骨太かつ奔放な味わいとなっています。

基本的に輸出やフランス国内への卸売はあまり行わず、セラーを訪れた一般顧客への直接販売のみというドメーヌ プティ プセ。そのため、ある程度の生産量のキュヴェに関しては、ワインの瓶詰めを一度に行うのではなく、ステンレス製のタンクなどに貯蔵・熟成させておき、定期的に瓶詰めを行います。

このオーセロワ プルミエ パッサージュも、必要な時に必要な分を瓶詰めされてきたワインですが、そのためタンク内での熟成中に酸素に触れる機会が増え、酸化的な環境で熟成されたワインのニュアンスが僅かに感じられます。

一方で、高いポテンシャルの区画に由来するであろう硬質で強烈なミネラル感が、このワイン全体をビシッと引き締めており、抜栓直後よりも時間の経過につれてクリーンで涼やかな味わいへと変化していきます。この傾向は、翌日、翌々日と持ち越しても続いていき、抜栓1週間後であっても不安定などころか、より集中力の増した味わいとなります。

このワインは、ビオロジックで栽培されたブドウを手摘みで収穫し、自然酵母のみで発酵。厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰め時に至るまで亜硫酸塩(酸化防止剤)も無添加で造られました。

Pinot Gris STZ / ピノ グリ エス テー ゼッドゥ

ヴィンテージ:2018
タイプ:白
産地:フランス アルザス地方
品種:ピノ グリ 100%

キュヴェ名のSTZは、アルザス地方マルレンハイムのグラン クリュ(特級畑)の1つであるSteinklotz(シュタインクロッツ)に由来するイニシャルのようなものです。

ごくごく小さな面積しか持たないドメーヌ プティ プセですが、その僅かな面積の中にこの恵まれた区画が含まれており、このワインはシュタインクロッツの畑に植えられたピノ グリから造られます。

このワインが、アペラシオンを名乗らない(名乗れない)理由は、ピノ グリを果皮と果汁を浸漬させるマセレーションを行っているからです。結果として、色調はオレンジがかったピンクとなり、ロゼでもなく、白ワインをマセレーションしたワインとも違った、チャーミングな色調となっています。

味わいはグラン クリュ由来の力強いミネラル感と熟した果実味があり、それでいてチャーミングな酸味とほろ苦さが、絶妙に交錯します。大人っぽいような味わいでいて、同時にキュートな表情を見せる、非常に情報量の多いワインとなっています。

抜栓直後はボリュームもしっかりと感じられ、わずかな発泡感と若干の揮発酸がありますが、時間の経過とともに味わいの各要素がまとまっていき、抜栓1週間後でもなお崩れることなく、その表現力の豊かさを楽しませてくれます。

このワインは、ビオロジックで栽培されたブドウを手摘みで収穫し、自然酵母のみで発酵。厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰め時に至るまで亜硫酸塩(酸化防止剤)も無添加で造られました。