Les Bois Perdus – Chap.05
植えたブドウたちがやっと育ってきたね。今年は収穫ができそうだ。
Alexis Robin / アレクシ ロバン
レナとアレクシ、この二人が揃うからこそ生まれる調和
素晴らしいワインを生み出してくれる作り手たちにはいろいろなタイプがいます。芸術家のような天才的な感性とひらめきで作る人もいれば、精微で丁寧な仕事の積み重ねで作る職人肌の人もいます。レナ ペルデュとアレクシ ロバンの2人のカップルで営まれるレ ボワ ペルデュは、どちらかと言えば後者の造り手と言えます。
もちろん、彼らが感性に乏しいと言いたいわけではありません。事実、2人はとても視野が広く、そして繊細な味覚の持ち主です。自らのインスピレーションによって、ワインの成長を方向づけ、素晴らしいワインを完成させています。しかし、そのプロセスを支えるのは、日々の細やかな仕事の積み重ねと、自らに妥協を許さない芯の強さです。
そして、もうひとつのアドバンテージは、2人の感受性が、微妙に異なっていて、それぞれが違ったポイントに気を配れるという点です。
もともと映画関係の仕事をしていたという2人ですが、活躍の場をワインに変えても、2人で作品を磨き上げているんだと感じます。
署名の記された作品たち
レ ボワ ペルデュのワインの魅力として強く感じるのが、『それぞれのキュヴェがちゃんと個性があり、違いを明確に感じる』です。
キュヴェが違えば味が違って当然じゃないかと思われるかもしれませんが、実は意外とこれができていない造り手も多いのも事実です。
畑の個性、ブドウ樹の個性、ヴィンテージの個性をいきいきと表現させるのが自然派ワイン作りですが、ワインそのものを酸化や微生物から守ろうとするあまり、製法の風味が強く出てしまい、本来の個性がマスクされるなんてこともあります。
しかし、レ ボワ ペルデュの2人は、しっかりとそれぞれのキュヴェを描き分けており、それぞれにちゃんと個性を感じます。
と同時に、ヴィンテージも品種も超えて全てのワインに通底する『署名』のような個性もあります。この『署名』が記されたワインというのが、実は一番好きなワインであったり、造り手であったりします。
暑かった2020年と2022年、涼しかった2021年
今回のリリースでは、2020年から最新の2022年までの3ヴィンテージのワインをリリースしています。
マロトリュ 2020は、実は1年半ほど前に日本に到着していたワインで、到着直後はやや還元気味の風味があったため、じっくりと熟成を待ちました。現在は還元香も無くなり、思わずニンマリしてしまうバランスになりました。
2020年は(ここ数年のスタンダードになってしまった)暑かった年で、当初このワインは、スパイシーで骨格のしっかりとした味わいでした。それが今や、香ばしさのある旨味に満ちたバランスに育ち、気づいたらボトルが1本空になってしまうようになっています。
涼しい年だった2021年は、
ポリシネル 2021
ソナティーヌ 2021
と2種類のワインがあらたに到着し、加えて
アフロディート 2021
エレ トランブル 2021
も追加で再入荷しています。
ポリシネル 2021は、ソーヴィニヨンブラン 100%の白ワインで、造り手いわく「ソーヴィニヨンブランらしくないソーヴィニヨン」。草原を吹き抜ける爽やかな風のようなクリーンで心地良い香りがあり、ハーブを思わせる風味と豊かな果実味が楽しめる癒し系ワイン。惜しいのは、生産量が極端に少なく、日本への入荷量もごく僅かな点。
ソナティーヌ 2021は、ガメイ 100%の赤ワインで、深くて落ち着いた黒系果実の風味が印象的な妖艶で大人っぽいワイン。しなやかで女性的な印象のワインではあるものの、ある種の威厳や風格も感じるスケールの大きさもあるワインで、将来が楽しみ。
アフロディート 2021
エレ トランブル 2021
は、今年(2023年)の前半ごろに、レナから「まだ2021年のワインがいくつか追加で買えるよ」と連絡をもらい、今飲んでも心地良いし、まだまだこれから深みを増していくポテンシャルもあるし、「いくらあっても困らないよな」と仕入れたもの。
リリース直後よりも、味わいに一体感が出てきていてますますご機嫌なワインになっています。鮮やかで外向的なアフロディートと重心低く大人っぽいエレ トランブルという対比も印象的です。
そして、またまたやってきた暑く乾燥した年の2022年。2021年は造られなかったロゼのエル ダンスが再登場。
エル ダンス 2022は、ロゼというよりも軽快な赤ワインといった位置づけで、色調も深く、果実味も豊かで生き生きとした味わい。チャーミングさもありつつも赤系果実の熟した風味は、艶やかさも感じます。
ぜひ野菜料理と一緒に
最後に少し補足というか、おまけを。
レ ボワ ペルデュのワインは、南フランス生まれということもあり、赤ワインが主体で果実味も豊かというラインナップから、食事にも味わいがしっかりしたものを…と思われがちです。
しかし、ぜひ試して頂きたいのが美味しい野菜をたっぷり使ったお料理との相性。赤ワインが(白ワインも)こんなに野菜料理に合うのかとびっくりします。
アルデッシュと言っても南北に長いのですが、ちょうどこの地区からオリーブの樹やアプリコットなどの果樹が多数見かけるようになり、南フランスの始まり感があります。
風景にオリーブの樹が見られるようになると、ワインが動物性脂肪よりもオリーブオイルなどを使った食事との相性が良くなるように感じていますが、同時に肉類などの動物性タンパク質そのものよりも野菜やハーブとの相性が良くなると感じます。
レ ボワ ペルデュのワインたち、ぜひ一度、たっぷりと野菜やハーブを使った料理と一緒に楽しんでみてください。
Polichinelle / ポリシネル
ヴィンテージ:2021
タイプ:白
産地:フランス コート デュ ローヌ地方
品種:ソーヴィニヨンブラン 100%
キュヴェ名のポリシネルは「イタリア笑劇や人形劇での道化役」の意味。ソーヴィニヨンブラン 100%で造られていますが、造り手いわく「ソーヴィニヨンブランらしくないソーヴィニヨン」とのこと。
草原を吹き抜ける爽やかな風のようなクリーンで心地良い香りがあり、ハーブを思わせる風味と豊かな果実味が楽しめる癒し系ワイン。惜しいのは、生産量が極端に少なく、日本への入荷量もごく僅かな点。
ブドウはビオロジックで栽培されたものを用い、自然酵母のみでステンレスタンクで発酵させ、そのまま熟成し、厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰め時に至るまで亜硫酸塩(酸化防止剤)無添加で造られています。
Elle Danse / エレ ダンス
ヴィンテージ:2022
タイプ:ロゼ
産地:フランス コート デュ ローヌ地方
品種:グルナッシュ 50%、サンソー 50%
キュヴェ名のエレ ダンスは「彼女は踊る」という意味で、キュートで花やかなイメージのネーミングのワイン。
グルナッシュ 50%、サンソー 50%というアッサンブラージュ(ブレンド)のロゼですが、軽快なロゼというよりは、淡い赤ワインに近いような密度の高いワインです。色調も深く、果実味も豊かで生き生きとした味わい。チャーミングさもありつつも赤系果実の熟した風味は、艶やかさも感じます。
ブドウはビオロジックで栽培されたものを用い、直接圧搾された果汁を自然酵母のみでステンレスタンクで発酵させ、そのまま熟成し、厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰め時に至るまで亜硫酸塩(酸化防止剤)無添加で造られています。
Malotru / マロトリュ
ヴィンテージ:2020
タイプ:赤
産地:フランス コート デュ ローヌ地方
品種:カリニャン 60%、カベルネソーヴィニヨン 20%、グルナッシュ 20%
キュヴェ名のマロトゥリュは、「無作法もの」という意味で、カリニャン 60%、カベルネソーヴィニヨン 20%、グルナッシュ 20%というアッサンブラージュ(ブレンド)で造られています。
2020年は、日本への到着当初は還元香がありましたが、リリースまで1年半ほど熟成を待ち、素晴らしい状態になりました。2020年は(ここ数年のスタンダードになってしまった)暑かった年で、当初このワインは、スパイシーで骨格のしっかりとした味わいでした。それが今や、香ばしさのある旨味に満ちたバランスに育ち、気づいたらボトルが1本空になってしまうようになっています。
エチケット(ラベル)には、外套(パーカ)を着た人物の後ろ姿が描かれ、少し影のある意味深な表現を感じます。フランスで人気のテレビドラマに Le Bureau des légendes(レジェンドたちのオフィス)という番組があり、外国に潜伏していた秘密工作員が主人公なのですが、この主人公のコードネームがマロトゥリュ(無作法もの)なのです。
かつて映画関係の仕事をしていた2人が名付けたということで、このドラマからインスピレーションを得たのかなと想像できますが、実はまだ本人たちにはこの関連性を確認していません。しかしこのワインのクールで落ち着いた雰囲気のイメージとは重なります。
ブドウはすべてビオロジックで栽培されたものを用いていて、カリニャンは地域の先達であるマゼルから、カベルネ ソーヴィニヨンとグルナッシュはオジル兄弟からブドウを購入しました。それぞれのブドウを別々にセミ カーボニック マセレーションと呼ばれる手法で醸しを行い、自然酵母のみでステンレスタンクで発酵させ、そのまま熟成し、厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰め時に至るまで亜硫酸塩(酸化防止剤)無添加で造られています。
※瓶詰めのタイミングで、キャップシールを包装する機械に不具合があり、ほぼ全てのボトルでキャップシールが非常に緩い状態になっています。予めご容赦くださいませ。
Sonatine / ソナティーヌ
ヴィンテージ:2021
タイプ:赤
産地:フランス コート デュ ローヌ地方
品種:ガメイ 100%
ソナティーヌ(ソナチネ:短い器楽曲)という美しい名前を持つワイン。ブドウ品種はガメイが100%用いられていますが、その半分は房ごと発酵させ、もう半分は除梗(房から梗の部分を取り除く)を行い果粒のみで発酵させています。こうしてミルフィーユのようにして醸されたこのワインは、ブドウ全体から得られる複雑な風味としっかりとした構成と、生き生きとしてフレッシュな果実味を併せ持ったバランスの良いワインとなっています。
深くて落ち着いた黒系果実の風味が印象的な妖艶で大人っぽいワイン。しなやかで女性的な印象のワインではあるものの、ある種の威厳や風格も感じるスケールの大きさもあるワインで、将来が楽しみ。
グラスに注ぐと、森のスグリを思わせる甘酸っぱい香りが広がり、深くて落ち着いた黒系果実の風味が印象的です。妖艶で大人っぽさがあり、しなやかで女性的な印象のワインではあるものの、ある種の威厳や風格も感じるスケールの大きさもあるワインで、熟成を待つのも楽しみなワインです。
ブドウはすべてビオロジックで栽培されたものを用いていて、半分を除梗し、もう半分は全房でミルフィーユのように層状態にして醸しを行います。自然酵母のみでステンレスタンクで発酵させ、木樽に移して熟成させ、厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰め時に至るまで亜硫酸塩(酸化防止剤)無添加で造られています。