Domaine Petit Poucet – Chap.03

ジェラール ブレス畑にて

鳥がね、巣箱にちゃんと入ってるんだよ!

Gérard Blaess / ジェラール ブレス

人生これからが本番

一言にワインの造り手といっても、いろんなバックグラウンドの人がいます。家族が、代々畑を所有していて、ワイン造りを続けている場合もあれば、全く違った職業から転身してワインの造り手になった人もいます。

そんな中、ドメーヌ プティ プセのジェラール ブレスは、ちょっと珍しいパターンです。

フランス アルザス地方の北部、マルレンハイム村を中心に所有する畑は、ジェラールの祖父が所有していたものでしたが、面積は狭く、専業でのワイン造りで暮らしていけるほどではありませんでした。

こういったケースでは、畑を貸し出すなどして収入を得るのが定番ですが、ジェラールは祖父と過ごした思い出を旨に、この限られた面積の畑からワインを造ることを決意しました。そして彼は、日中は一般企業で働きながら、退勤後や休日に、畑仕事やワイン造り、販売などをおこなうという、今で言うところのダブルワークのような形を選択します。

時間も面積も限られているために生産本数も極わずかで、主として直接購入に来る一般顧客むけだけに販売するなど、知る人ぞ知るワインでもありました。

畑に備え付けられた陶器製の鳥の巣箱

はじめてジェラールにあった時、そして彼の手掛けたワインを飲んだ時、こんなワインがあったなんて!と驚いたことを覚えています。今や自然派ワインは世界中で流行していますし、ワイン業界みんなが良いワイン、良い造り手を血眼に探し求めているなかで、主に地元の人だけが知っているこんなすごいワインがあったなんて…ととにかく驚かされました。

さて、そんなダブルワークですごいワインを手がけてきたジェラールも、いよいよ定年退職となり、第二の人生を歩むことになりました。

彼が選んだのは当然、大好きな畑仕事とワイン造りの仕事です。アルザスのブドウ畑は、地価が高く、おいそれと買い足したりすることはできないのですが、第二の人生に向けて覚悟を決めたジェラールは、自分の村にある畑を少し広げ、人生これからが本番!というかのように嬉しそうに畑に出て行きます。

そんなジェラールから届いた新しいヴィンテージのワインのご紹介です。

今回ご紹介するのは以下の2種類。

◯ オーセロワ 2020
◯ ピノ グリ マセレーション STZ 2021

オーセロワ 2020

※画像は旧ヴィンテージ

おなじみオーセロワは2020年、なぜか今回はプルミエ パッサージュの名前がエチケット(ラベル)になく、シンプルにオーセロワとなりました。

2020年は、非常に暑かった年で、結果としてアルコール度数も高く、力強い味わいのワインとなりました。ただ、強さをただ重いだけのワインにしないために、使用されているブドウの50%にマセレーション(醸し)を行いました。結果、ゆるいところのない焦点のしっかりと定まった美しい構造のワインとなり、2018年にあった揮発酸のニュアンスもなく、非常に安定したバランスに仕上がりました。

香りには、中国茶のようなエキゾチックなニュアンスがあり、ライチのような厚みのある果実の香りが加わります。果実味も凝縮しつつ、シャープな輪郭があり、余韻にたっぷりと旨味を感じます。

抜栓当日よりも3日目頃からが絶好調で、奥に秘めていたミネラル感が前面に感じられ、紅茶のような風味も加わって複雑な表現力を持ったワインになります。酸化的なニュアンスは一切感じさせず、安定した味わいがその後も続くので、安心して長い時間をかけて飲んでいただけるワインです。

ピノ グリ マセレーション STZ 2021

Pinot Gris Macération STZ 2021 / Domaine Petit Poucet

もう1種類は、グラン クリュ(特級畑)であるシュタインクロッツの区画に植わるピノ グリで造られるSTZ 2021年です。

2021年といえば雨がちで熟度が低い年というイメージがありますが、このワインに関しては、恵まれたグラン クリュ(特級畑)の恩恵をたっぷりと受けて、しっかりと熟した果実味と鮮やかなアロマを備えたワインとなっています。

特徴としては、果皮に色素を備えたピノ グリにマセレーション(醸し)を実施していて、深いルビー色の色調のワインとなっています。加えて、厚みのある果実味とほどよいタンニンが調和した風格のあるバランスです。安定感も抜群で、2018年にあった揮発酸のニュアンスもなく、その他のネガティブな要素も見つかりません。

番線直後はアルコールの高さを感じますが、グラスからは香木やプラム、フランボワーズのような鮮やかなアロマが立ち昇ります。加えてリキュールやキルシュ(種子ごと潰したサクランボの蒸留酒)のような大人っぽさも加わり、妖艶で奥深い味わいとなっています。まさにグラン クリュ(特級畑)の風格が詰め込まれた1本で、相当な熟成のポテンシャルを感じます。

このワインに関しても、抜栓当日よりも3日後くらいからその真価を感じられるようになり、それ以降も大きく崩れることなくそのポテンシャルを見せつけてくれます。

+ 造り手詳細

樽のなかでまだ発酵を続けるワイン

Auxerrois / オーセロワ

※画像は旧ヴィンテージ

ヴィンテージ:2020
タイプ:白
産地:フランス アルザス地方
品種:オーセロワ 100%

おなじみオーセロワは2020年、なぜか今回はプルミエ パッサージュの名前がエチケット(ラベル)になく、シンプルにオーセロワとなりました。

2020年は、非常に暑かった年で、結果としてアルコール度数も高く、力強い味わいのワインとなりました。ただ、強さをただ重いだけのワインにしないために、使用されているブドウの50%にマセレーション(醸し)を行いました。結果、ゆるいところのない焦点のしっかりと定まった美しい構造のワインとなり、2018年にあった揮発酸のニュアンスもなく、非常に安定したバランスに仕上がりました。

香りには、中国茶のようなエキゾチックなニュアンスがあり、ライチのような厚みのある果実の香りが加わります。果実味も凝縮しつつ、シャープな輪郭があり、余韻にたっぷりと旨味を感じます。

抜栓当日よりも3日目頃からが絶好調で、奥に秘めていたミネラル感が前面に感じられ、紅茶のような風味も加わって複雑な表現力を持ったワインになります。酸化的なニュアンスは一切感じさせず、安定した味わいがその後も続くので、安心して長い時間をかけて飲んでいただけるワインです。

このワインは、ビオロジックで栽培されたブドウを手摘みで収穫し、自然酵母のみで発酵。厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰め時に至るまで亜硫酸塩(酸化防止剤)も無添加で造られました。

Pinot Gris Macération STZ / ピノ グリ マセレーション エステーゼッドゥ

Pinot Gris Macération STZ 2021 / Domaine Petit Poucet

ヴィンテージ:2021
タイプ:白
産地:フランス アルザス地方
品種:ピノ グリ 100%

キュヴェ名のSTZは、アルザス地方マルレンハイムのグラン クリュ(特級畑)の1つであるSteinklotz(シュタインクロッツ)に由来するイニシャルのようなものです。

ごくごく小さな面積しか持たないドメーヌ プティ プセですが、その僅かな面積の中にこの恵まれた区画が含まれており、このワインはシュタインクロッツの畑に植えられたピノ グリから造られます。

このワインが、アペラシオンを名乗らない(名乗れない)理由は、ピノ グリを果皮と果汁を浸漬させるマセレーションを行っているからです。結果として、色調はオレンジがかったピンクとなり、ロゼでもなく、白ワインをマセレーションしたワインとも違った、チャーミングな色調となっています。

2021年といえば雨がちで熟度が低い年というイメージがありますが、このワインに関しては、恵まれたグラン クリュ(特級畑)の恩恵をたっぷりと受けて、しっかりと熟した果実味と鮮やかなアロマを備えたワインとなっています。

特徴としては、果皮に色素を備えたピノ グリにマセレーション(醸し)を実施していて、深いルビー色の色調のワインとなっています。加えて、厚みのある果実味とほどよいタンニンが調和した風格のあるバランスです。安定感も抜群で、2018年にあった揮発酸のニュアンスもなく、その他のネガティブな要素も見つかりません。

番線直後はアルコールの高さを感じますが、グラスからは香木やプラム、フランボワーズのような鮮やかなアロマが立ち昇ります。加えてリキュールやキルシュ(種子ごと潰したサクランボの蒸留酒)のような大人っぽさも加わり、妖艶で奥深い味わいとなっています。まさにグラン クリュ(特級畑)の風格が詰め込まれた1本で、相当な熟成のポテンシャルを感じます。

このワインに関しても、抜栓当日よりも3日後くらいからその真価を感じられるようになり、それ以降も大きく崩れることなくそのポテンシャルを見せつけてくれます。

このワインは、ビオロジックで栽培されたブドウを手摘みで収穫し、自然酵母のみで発酵。厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰め時に至るまで亜硫酸塩(酸化防止剤)も無添加で造られました。