Jacques Perritaz – Chap.02

最近はこの地域でもエコロジーの意識が高まってきていて、そんな中で近所レストランからのリクエストで僕のシードルをKEYKEGに詰め始めたんだ。

Jacques Perritaz / ジャック ペリタズ

KEYKEG(キーケグ)ってご存知ですか!?

前々からやりたいやりたいと思ってなかなか、挑戦できていなかったことの一つにKEYKEG(キーケグ)に詰められたシードル(そして将来的にはワインも)の販売があります。

KEYKEG(キーケグ)とはペット素材で作られたワンウェイ(使い捨て)の大容量容器で、クラフトビールなのでよく使われています。一般的なステンレス樽と違って、容器自体の返却や保証金もなく、軽量です。

KEYKEG(キーケグ)は、巨大なバックインボックスのような構造ですので、外気に液体が直接触れずに、少しづつ提供できますので、比較的長い期間、品質を損なわずに提供できると言われています。

使用には専用のカプラーやアタッチメントが必要ですので、それらをお持ちの方のみが提供可能となるというのが大前提です。現在は、クラフトビールなどを取り扱っている飲食店さんなどで導入が進んでいます。

プラスチック容器なのに環境負荷が少ないの?

さて、リユースの観点からすると、ワンウェイ(使い捨て)というのは環境保護に逆行してそうですが、海外から輸入するケースなどでは、ステンレス容器は重量もあり、返送を含めたエネルギーコストも大きくなります。その点軽量で廃棄しやすい素材のKEYKEG(キーケグ)の使用には、ある程度の合理性があると考えています。

とはいえ、レジ袋有料化など脱プラスチックが意識される現代で、使い捨てのペット容器を環境に優しいというのは変なのでは?という意見も当然あると思います。

これに関しては、そもそも人間が社会生活を送る上で、何かしらの環境負荷を発生させながら生きています。そのような状況の中で、何を自分たちで考え、何を選ぶのかということが重要だと考えています。

廃プラスチック問題でいうと、海洋プラスチック問題のように分解に非常に時間のかかる物質が、管理されない環境に無尽蔵に放出されることがまず問題であると考えています。

プラスチックフリー先進国である欧米は、そのゴミのほとんどを埋め立てによって処理してきました。自然分解が難しいプラスチックの多くも、その広大な土地を利用してその他のゴミと同じく埋め立てられてきたのです。

一方日本では、ゴミの多くが焼却されています。焼却自体にもエネルギーが必要なので、ごみ焼却が正しい方向性であるかどうかはまた別の議論となりますが、これまでプラスチックゴミの多くは焼却されてきました。

ご存知の通りプラスチック製品は、石油由来の素材であるため、焼却時の燃焼効率も良く、単純に燃やされるのではなく「サーマルリサイクル(熱回収)」というごみ焼却時の燃料の代替等に使用されています。

もちろん素材によっては、 PET 素材などリサイクルに向くものもありますので、それらの素材を分別回収し一部をリサイクル、一部を熱回収にあてるというのが日本の現状です(それでも一部埋め立て処理があるので問題がまったくないわけではありません)。

エネルギー効率の問題をひとまず横に置いて、プラスチック素材の環境中への無管理な放出を防ぐという意味では、ゴミとなったものを適切に分別し、適切に捨てる(焼却する)ことが日本では現時点でのベターな方向性だと思います。

もちろんポイ捨てされたり、風に飛ばされたりと環境中にプラスチックが放出されるケースはゼロにはなりませんので、包装など含め、プラスチックの使用をできるだけミニマムにする必要があるというのは間違いありません。

プラスチック云々の話は、非常に長くなってしまうので(すでに長い文章になってますが)、また別の機会にお話できればと思います。

ガラス瓶より軽いというメリットと課題

KEYKEG(キーケグ)の環境負荷に関するもうひとつのメリットは、「軽い」という点です。今までのようにガラス瓶を使用する場合よりも軽量で、輸送コストやエネルギーが節約可能です。

ガラス瓶も本来はリサイクル可能な素材なのですが、ご存知の通り輸入ワインやシードルの瓶などのリサイクル率やリユース率は非常に低い水準になっています。これはまた別のアプローチで改善していきたいと思っています。

またまた前置きが長くなってしまいましたが、こうしたリサイクルされないガラス瓶の問題や、輸送にかかるエネルギーの節約、プラスチックの問題など総合的に考えたうえで、新しい提供の仕方としてKEYKEG(キーケグ)を広めていけたらなと思い、今回輸入にいたりました。

このあらたな挑戦の背中をまず最初に押してくださったのが、

東京 外苑前の Gar Eden(ガル エデン)小林様
東京 三軒茶屋の Pigalle Tokyo 山田ご夫妻

でした!!!マーケットがどれくらいあるのかわからないKEYKEG(キーケグ)輸入の第一歩を踏み出せたのは皆様のお陰です。この場を借りてお礼申し上げます。

ニューリリースは新ヴィンテージ・新キュヴェのチュルゴヴィ

さて、それで何が、KEYKEG(キーケグ) に詰めて送られてきたかというと…

シードルリー デュ ヴュルカンの新ヴィンテージで新キュヴェとなる「チュルゴヴィ 2019」です!

チュルゴヴィ(Turgowy) は、微妙に綴りが異なりますが、スイスの北東のドイツと国境を接する地域であるトゥールガウ(Thurgau 独語)もしくはチュルゴヴィ(Thurgovie 仏語)州で収穫されたリンゴから造られるシードルです。

このシードルは、トビアスラーとトゥルガウワー ヴァインアップフェルと呼ばれる2種類の品種のリンゴから造られます。

どちらも非常に古い品種で、トビアスラーは、1805年からスイス東部で栽培されているリンゴの品種です。果実は中程度の大きさで、緑赤の縞模様があり、果肉はしっかりとしていてジューシーで、酸味が強く、シードルに最適な一級品のリンゴと言われています。

トゥルガウワー ヴァインアップフェルは、1860年頃から栽培されていたとされる品種で、別名にチュルゴヴィのヴィーナスと呼ばれたりもするこれまたシードルに最適なリンゴ品種と言われています。果実は中くらいで赤と黄色がかった緑の色調が特徴です。果肉はやや荒く、シャキッとした食感と甘さを感じる酸味、華やかな芳香が特徴です。

この2019年のチュルゴヴィは、アルコール度数4.5%のセック表示で、リンゴや蜂蜜、ハーブ、白い花を感じさせるような華やかな香りとふくよかな果実味があり、そこに程よくフレッシュな酸味が加わる柔らかな飲み心地のシードルに仕上がっています。

春までもう少しですが、チーズを挟んだサンドイッチやフィッシュアンドチップスなどをおともに、タップでガブガブとこのシードルを飲んで頂きたいと思います!!

+ 造り手詳細

Cidre Turgowy KEYKEG 20L / シードル チュルゴヴィ

ヴィンテージ:2019
タイプ:泡
産地:スイス
品種:リンゴ(トビアスラー、トゥルガウワー ヴァインアップフェル)