Bruno Schloegel – Chap.01
こうして畑を歩き、観察することが私たちの仕事。ブドウ畑は、指揮者のいないオーケストラのようなものだから。
Bruno Schloegel / ブリュノ シュルーゲル
心震えるワインに出会ってますか?
もう何年も前のこと、神戸にある、とあるワインショップの店主さんとお話をしていた時のこと。キャリアも長いこのワインショップの店主さんは、柔らかい物腰ながらもいつもしっかりと軸を持った考えを実践されており、同業者の方からの信頼も厚い方です。
そんな方に「藤木さん、最近感動するようなワインってありましたか?」と聞かれたことがあります。
曰く、「良い品質、良い仕事を感じるワインは沢山出会うのですが、年齢を重ねたことが理由かどうかわかりませんが、心動かされるようなワインというのがとても少なくなってきました。ちょっと聞いてみたいと思って。」とのことでした。
当時の私は、「運が良いのかもしれませんが、毎年何本かは、心が震えるようなワインとの出会いがあります。」と答えたことを覚えています。
そこからさらに時間が経ち、(気は若いつもりではいますが)生物的にはそこそこの年齢となりました。
そして、目新しさに飛びつくようなフェイズは随分前に通り過ぎてしまっていて、信頼できる造り手のワインを深く理解することに多くの時間を費やすようになりました。当然「新しい発見や驚き」というのは少なくなりました。
このような凪というか、山を登って高原に至った状態が、あの時の店主さんがお話されていたことなのかなと思いつつ、まだ運が良いのか、それでも年に何本かは心動かされるワインに出会うことができます。
さて、ここからが本題です。
心震えるようなワインというのは、一生のうちにそんなに沢山は出会わないものです。しかし、世の中は広く、深く、複雑です。飲むワイン全てに心動かされ、頭を抱え、銀行の口座残高の底まで仕入れたくなるワインに、そしてそのワインを生み出す造り手に出会ってしまいました。
今日は、そんな新しい友人のご紹介です。
私のワインは自然派とは呼ばないで欲しい
色んな巡り合わせとご縁で出会うことができたのは、フランス アルザス地方 ヴォルクスハイムの村に拠点を置くメゾン リスナー のブリュノ シュルーゲル。
COVID-19の渦中の2021年、普段であれば造り手本人を訪ね、言葉に耳を傾け、畑を一緒に歩くことでその想いとワインの未来に思いを馳せます。しかし、この時ばかりは、メールでのやり取りしか手だてがありません。しかし、ブリュノとのメールのやりとりは、当初から非常に刺激的なものでした。
自己紹介で「自然派ワインのインポーターである」旨を伝えたところ…
「私のワインは自然派とは呼ばないで欲しい。」
との言葉が返ってきました。
非常に興味深いと思った私は、彼が自分自身のブドウ栽培やワイン造りをどう捉えているのかを尋ねてみました。
「私は、科学者・音楽家・哲学者でありながら『明日のための今日の農民』でもあった、福岡正信氏の著書『わら一本の革命』を読みました。そこで使われている彼の農法を翻訳した言葉『sauvage(ソヴァージュ:野生の)』が、私のワイン造りに紐づく概念だと考えています。」
「人間が権力と知識に染まった姿勢をとり、『行動しない』という決断からあまりに遠く離れてしまっている『naturel(天然)』や『nature(自然)』よりも、この言葉を好みます。もしあなたが私の事を日本の友人に紹介してくれる折には、福岡正信氏が使ったであろう言葉で紹介して頂きたいです。」
福岡正信氏の名前は、ワインの造り手に限らず多くのヨーロッパの農業家から名前を聞く機会があります。その福岡氏が提唱した農法は「自然農法」と名付けられ、国内外多くの農業家に影響を与えてきました。
つまり、ブリュノは、彼自身の農法を福岡正信氏への敬意も込めて「自然農法」と呼んでほしいと言っていたのです。
ここから、フランス語のsauvage(ソヴァージュ:野生の)にあたる日本語は福岡氏が提唱した「自然農法」という言葉とは内包している意味が違うように感じる…だとか、agriculture(農業)のculture(耕作・栽培)は、人間が干渉するものである…だとか、農法という言葉の「法」という言葉の概念は、中国の起原を遡れば「理(ことわり)・真理」を表しているんだ…などと、様々なやりとりがあったのですが、福岡正信氏が提唱した「自然農法」という概念こそが、ブリュノ シュルーゲルの体現している取り組みと重なった概念であり言葉であるということについてはよく理解できました。
ということで、メゾン リスナーのワインは、
フランス語では、”Les vins sauvages(野生のワイン)”と呼び、 日本語では「自然農法のワイン」となります。
こうしたメールでのやり取りを重ねた後、ワイン自体は、ほどなく日本に届いたのですが、やはりこのワインを伝えるためには、ブリュノ シュルーゲルに直接会って話す必要があると感じ、2021年の11月に渡仏します。
そして、造り手本人とゆっくりと時間をかけて語り、時間を過ごした結果、彼の驚くほどの深い知見と哲学にふれることになりました。
ブドウ畑は、指揮者のいないオーケストラ
では、ブリュノ シュルーゲル氏が実践している自然農法とは、具体的にビオ(オーガニック・有機栽培)の生産者や自然派(nature・naturel)の造り手たちとどう違うのでしょうか。
その説明の前に福岡正信氏が提唱した自然農法について、簡単にふれたいと思います。
福岡正信氏は、先にあげた「自然農法 わら一本の革命」の他にいくつかの著書を残していますので、それらの書籍を手にとって頂ければ、どういった概念であるかの理解のきっかけになると思います。
これは短い文章で説明するのは非常に困難で、そもそも哲学者でもある福岡氏の考えを書籍を読んだだけで理解してるとは到底言えません。あくまで、大枠の説明であるという前提で捉えていただきたいのですが、福岡氏の自然農法とは、様々な植物のほか、昆虫やミミズなどの環形動物を含む動物、微生物などの多様な生物の営みに寄り添い、「無農薬・無肥料・不耕起」を原則として作物を得るという農法です。
では、実際どんな畑仕事をしているのでしょうか。
メゾン リスナーの畑における1年のはじまりは、他の造り手同様に剪定からはじまります。ただ、剪定の開始時期は非常に遅く3-4月ごろからのスタートとなると言います。
ブリュノ曰く、ブドウの樹や他の多くの植物は、冬の寒さに耐え、春からの成長の準備のためにエネルギーを根や大地に向けて流して溜め込みます。このタイミングで剪定をしてしまうと、その傷口から菌やウィルスが植物の中に取り込まれやすくなり、春以降の病気の原因となるといいます。
また、これはブルゴーニュのヤン ドゥリューも以前話していたことですが、剪定を早くすると、そのシーズンの植物の成長のスタート時期も早くなり、ブドウの成熟としての理想的なリズムからずれてしまうというのも理由です。
早く育てようとするのではなく、ゆっくりと時間をかけて育つことが重要であるという考え方です。
春が来て、芽吹きが始まり、ブドウだけでなく多くの植物や生物が生き生きと活動し始める時期になると、メゾンリスナーの畑は、多様な植物に覆われ、昆虫や爬虫類、鳥などが多く集まる楽園となります。
メゾン リスナーでは、いわゆる雑草の除草作業を原則行いません。唯一の例外は、収穫の直前時期で、これは人間が畝(うね)を通って収穫しやすいようにするためで、この時期に1度だけ地際よりもやや高い位置で刈り倒すということを行います。耕耘(こううん)も行わないので、この刈り倒す作業が唯一のトラクターを使った作業になります。
ベト病などに対しての防除は、他の多くの造り手と同様に実施しますが、興味深いのはそのタイミングです。
ブリュノ 曰く、「この地域の多くの畑では、ベト病の原因となる菌は下から、つまり土からやってくる。しかし、私の畑ではベト病は空からやってくるんだ。」
「私の畑では、大地に近い場所には様々な植物や動物、菌や微生物が競争的環境で共生していて、ベト病の菌が増えていくのに障害になっている。ベト病の菌が、他の畑で充分に増えて、優勢になり、宙に舞うようになってから私の畑に降ってくるんだ。」 そのため、ボルドー液の散布のタイミングが、地域の畑よりも1-2週間ほど遅くなり、散布量を少なく、散布期間も短くできると言います。
またブドウの徒長枝(伸びる蔓)を切ることもしないため。初夏の畑はさながらトンネルのようだとか。ベト病の菌は光を嫌うため、空から舞い降りてくる菌たちをトンネルの外にとどめることで、菌の活発な活動を妨げます。
徒長枝を切らないもうひとつの理由は、果実の成熟にあります。成長期にあるブドウの徒長枝を切ってしまうと、ブドウは再び葉を増やそうとエネルギーを使い始めます。植物には、自分自身の身体を育てよう、守ろうとする栄養成長期と子孫を残すために種子の成熟に集中する生殖成長期があります。生殖成長(果実の成熟)に移行しようとする時期に徒長枝を切ってしまうと、果実の成熟に使われるエネルギーが失われてしまいます。
こうして様々な生物と競争し、共生しながら育つブドウは、収穫量も少なく、また生育期間も長くなります。収穫の開始時期も同じ地域の生産者よりもかなり遅く、2021年はなんと10月になってから収穫を開始したと言います。
「私の仕事は、観察すること。畑を歩いて、ブドウや他の生物の声を聞くことが仕事なんだ。」
と話すブリュノに、「だとしたらあなたは指揮者だね。ブドウや野草、昆虫や鳥といった多種多様な生物が歌い、音楽を奏でている畑という名のオーケストラの。」と伝えると、「いや、ブドウ畑は、指揮者のいないオーケストラだよ」と笑って答えてくれました。
終わらない対話
ブリュノとの対話は、非常に貴重な時間でした。まだまだここに書ききれないほどの知見、洞察、哲学に触れ、それら全てが腑に落ちるものでした。この終わらない対話に関しては、別の機会を設けて少しづつお伝えしていきたいと思います。
まずは、ブリュノ シュルーゲル氏が、「干渉しない」という困難な決断の上で生み出した心震えるワインたちが、日本にこうして届いた幸運を喜びつつ、それぞれのワインの奏でる音楽に共鳴していただきたいと思います。
はじめてメゾン リスナーのワインたちを飲んだ時の感覚は、今でもありありと思い出されます。
「それぞれのキュヴェが、多彩で多様な表現を備えていながら、全てのワインに通底する強い芯を感じることができる。それはさながら署名のようなもので、これは畑を単に放任して生まれるようなものではなく、まさに理想的なワイン。」
大げさと思われるかもしれませんが、心からそう思えました。
Crémant d’Alsace Tradition / クレマン ダルザス トラディション
ヴィンテージ:NV
タイプ:泡
産地:フランス アルザス地方
品種:シャルドネ他
前年のワインをベースに翌年の果汁を添加することによって、ブドウ以外の酵母添加も糖分添加も行わないで瓶内二次発酵をした純粋無垢なスパークリングワイン。このワインに関しては、亜硫酸塩(酸化防止剤)の添加も行っておらず、まさに理想的なスパークリングワインとなっています。
上質なスパークリングワインを表現する時に、まるでシャンパーニュのような…や、下手なシャンパーニュがいらない…などと評することがよくありますが、シャンパーニュという枠組みと比較することがナンセンスな唯一無二の個性を備えたこのワインの魅力は、発泡しているか否かにかかわらず、一握りの造り手たちとだけ比較しうる表現力だと思います。
ピュアで無垢な風味ながらも、栗やトーストを思わせるような香ばしいフレーバーを備えており、泡立ちは繊細で余韻も長く、 何度でも、何時間でも、グラスの中に自らの心と体を沈み込み得るワインです。
Edelzwicker .G / エデルツヴィッカー ポワン ジェ
ヴィンテージ:2019
タイプ:白
産地:フランス アルザス地方
品種:ゲヴェルツトラミネール他
エデルツヴィッカーとは、いくつもの品種のブドウを混醸することが許されたカジュアルなワインとしてアルザス地方で定義されています。リスナーにおけるエデルツヴィッカーは、ウイヤージュ(補酒)用に別にとっておいたワインや、瓶詰め後のタンクや樽の底に残った澱(おり)の部分などを集めて造られるワインです。
ある意味においてブドウや果汁にとって過酷な環境にさらされた中で生まれたワインであり、だからこそこのワインでしか表現し得ない、混沌としたエネルギーの中で生まれる特別な表現力が、グラスから溢れてきます。
自然農法で栽培されたブドウから自然酵母の力のみで発酵させ、厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰め時に少量の亜硫酸塩(酸化防止剤)を添加して造られます。
Auxerrois / オーセロワ
ヴィンテージ:2020
タイプ:白
産地:フランス アルザス地方
品種:オーセロワ 100%
アルザスの伝統品種のひとつであるオーセロワ。白い花を思わせるチャーミングな風味と柔らかな果実味が特徴です。リスナーのオーセロワは化粧っ気のない素朴でピュアな魅力に満ちていて、意味深く広がる果実味と非常に長い余韻でその奥行きの深さを感じることができます。
自然農法で栽培されたブドウから自然酵母の力のみで発酵させ、厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰め時に少量の亜硫酸塩(酸化防止剤)を添加して造られます。
Pinot Gris / ピノ グリ
ヴィンテージ:2018
タイプ:白
産地:フランス アルザス地方
品種:ピノ グリ 100%
品種名のピノ グリのグリとはグレー(灰色)のことで、黒ブドウでも白ブドウでもない色素と風味を持ったブドウ品種です。メゾン リスナーのピノ グリは、みずみずしさと厚みのある旨みがバランス良く感じられる重奏的な味わいで、香ばしさと滋味深い広がりの余韻が特徴です。
自然農法で栽培されたブドウから自然酵母の力のみで発酵させ、厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰め時に少量の亜硫酸塩(酸化防止剤)を添加して造られます。
Riesling / リースリング
ヴィンテージ:2019
タイプ:白
産地:フランス アルザス地方
品種:リースリング 100%
メゾン リスナーのリースリング3部作の序章。純粋、無垢、靜謐(せいひつ)な味わいは、リスナーのその他のワインにも共通する署名のような味わいですが、良し悪しではなく、弦楽四重奏のようなその他のスタンダードキュヴェと異なり、オーケストラの片鱗を感じさせてくれるワイン。
硬質なミネラル感と暖かみのある果実味、清々しい香ばしさと、品の良い酸とゆっくりと目の前のグラスと向き合えば向き合うほど、色々な表情を見せてくれるワイン。
自然農法で栽培されたブドウから自然酵母の力のみで発酵させ、厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰め時に少量の亜硫酸塩(酸化防止剤)を添加して造られます。
Sylvaner Dionysiuskapelle / シルヴァネール ディオニュジオスカペル
ヴィンテージ:2019
タイプ:白
産地:フランス アルザス地方
品種:シルヴァネール 100%
Dionysiuskapelle(ディオニュジオスカペル)とは、ギリシア神話に登場する豊穣とブドウ酒と酩酊の神であるディオニューソスを祀った礼拝堂のこと。
アルザスの伝統品種のひとつであるシルヴァネールを用いたこのワインは、力強い旨みと香ばしさ、奔放な果実味を備えていて、生き生きとしたエネルギーに満ちたワインとなっています。香草を想わせる香りや暖かみを感じる旨み、塩味のようなミネラルを余韻に感じる集中力のある味わいが感じられます。
自然農法で栽培されたブドウから自然酵母の力のみで発酵させ、厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰めに至るまで亜硫酸塩(酸化防止剤)の添加を行いません。
Pinot Blanc Horn / ピノ ブラン ホーン
ヴィンテージ:2017
タイプ:白
産地:フランス アルザス地方
品種:ピノ ブラン 100%
アルザスの伝統品種のひとつであるピノ ブランを用いたワイン。ピノ ブランは爽快な風味と酸にシンプルな飲み心地が特徴とされるブドウ品種ですが、リスナーのピノ ブランは、その特徴的な土壌や環境、栽培によって力強い表現力を放つワインとなっています。
キュヴェ名のホーンは、ヴォルクスハイムの西側にある丘の名称で、この区画はヴォルクスハイムの中心とは異なる土壌の特性があり、より凝縮したミネラル感と芯の集中力を感じさせるワインを生み出します。
2017年は亜硫酸(酸化防止剤)無添加や時間の魔法もあり、様々な味わいの要素が溶け合い、穏やかに重なり合う風味とまだまだ力強いミネラル感が印象的です。
自然農法で栽培されたブドウから自然酵母の力のみで発酵させ、厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰めに至るまで亜硫酸塩(酸化防止剤)の添加を行いません。
ヴィンテージ:2019
タイプ:白
産地:フランス アルザス地方
品種:ピノ ブラン 100%
2019年は、ヴィンテージの影響もあり、より奔放でいきいきとした果実味が前面に出ており、力強いミネラル感とともに芯の太さを感じさせてくれる味わいとなっています。
自然農法で栽培されたブドウから自然酵母の力のみで発酵させ、厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰め時に少量の亜硫酸塩(酸化防止剤)を添加して造られます。
Riesling Wolxheim / リースリング ヴォルクスハイム
ヴィンテージ:2019
タイプ:白
産地:フランス アルザス地方
品種:リースリング 100%
メゾン リスナーのリースリング3部作の第2章。リースリングという品種がアルザスという土地で特別な地位を与えられているのは、こうして特別なテロワールとの相互作用をしっかりと高めていける奥深さがあるからだと感じます。
スタンダードのリースリングよりも凝縮したミネラル感と複雑な果実味、余韻の長さなど、様々な音色が重なりあう素晴らしい交響曲です。
自然農法で栽培されたブドウから自然酵母の力のみで発酵させ、厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰め時に少量の亜硫酸塩(酸化防止剤)を添加して造られます。
Muscat Altenberg de Wolxheim / ミュスカ アルテンベルク ドゥ ヴォルクスハイム
ヴィンテージ:2019
タイプ:白
産地:フランス アルザス地方
品種:ミュスカ 100%
ヴォルクルスハイム村のグラン クリュ(特級畑)であるアルテンベルク ドゥ ヴォルクスハイムに植わるミュスカから造られるワイン。ミュスカはアルザスの伝統品種のひとつですが、リースリングやゲヴェルツトラミネールなどよりも格下に見られることも多く、このアルテンベルク ドゥ ヴォルクスハイムの区画でもミュスカは非常に稀なブドウ品種となっています。
しかし、ブリュノ シュルーゲル氏曰く、ヴォルクスハイム、なかでもアルテンベルク ドゥ ヴォルクスハイムは歴史的にみてもミュスカに最適の畑とされており、テロワールの真髄を精微に写し取ることができている品種であるといい、この区画を非常に大切にしています。
味わいとしては、圧倒的なまでに重厚なミネラル感と余韻の長さ、複雑味を内包しており、高いテンションと冷たくしなやかな表情が共存している素晴らしいワイン。途方も無い長い寿命と未来の可能性を秘めた傑作です。
自然農法で栽培されたブドウから自然酵母の力のみで発酵させ、厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰め時に少量の亜硫酸塩(酸化防止剤)を添加して造られます。
Riesling Altenberg de Wolxheim / リースリング アルテンベルク ドゥ ヴォルクスハイム
ヴィンテージ:2018
タイプ:白
産地:フランス アルザス地方
品種:リースリング 100%
メゾン リスナーのリースリング3部作の最終章。ヴォルクルスハイム村のグラン クリュ(特級畑)であるアルテンベルク ドゥ ヴォルクスハイムに植わるリースリングから造られるワイン。
土壌、環境、ブドウ、畑に生きる様々な生物の調和で生まれる傑作。畑は、指揮者のいないオーケストラ、同じくグラン クリュのミュスカ アルテンベルク ドゥ ヴォルクスハイムが、そのオーケストラが奏でる交響曲だとすると、リースリングはピアノ協奏曲。とにかくこの雄弁なワインに耳を傾けてほしいと思います。
自然農法で栽培されたブドウから自然酵母の力のみで発酵させ、厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰めに至るまで亜硫酸塩(酸化防止剤)の添加を行いません。
Pinot Gris Bruch / ピノ グリ ブリュシュ
ヴィンテージ:2019
タイプ:ロゼ
産地:フランス アルザス地方
品種:ピノ グリ 100%
品種名のピノ グリのグリとはグレー(灰色)のことで、黒ブドウでも白ブドウでもない色素と風味を持ったブドウ品種です。多くの場合白ワインとして仕込まれるこの品種ですが、果皮等と果汁を浸漬させるマセレーション(醸し)を行うことで、さながら赤ワインのような色調としなやかな果実味、程良いタンニン分を備えます。
紅茶を思わせるオリエンタルなフレーバーと木苺や野生のカシスのような力強い香り、ドライな口当たりながらも余韻に広がる優しい果実味など、女声の伸びやかな歌声が聞こえてきそうなワインです。
自然農法で栽培されたブドウから自然酵母の力のみで発酵させ、厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰めに至るまで亜硫酸塩(酸化防止剤)の添加を行いません。
Pinot Noir Reserve / ピノ ノワール レゼルヴ
ヴィンテージ:2018
タイプ:赤
産地:フランス アルザス地方
品種:ピノ ノワール 100%
アルザスは白ワインの産地ということもあり、メゾン リスナーが手掛ける数少ない赤ワインのひとつ。アルザスの中でも北部に位置するヴォルクスハイムは、ピノ ノワールに黒系果実の風味と火山を思わせるようなスモーキーなニュアンスが加わる印象が多いですが、このワインに関しても厚みのある果実味と火山の風味が重なり合ったバランスとなっています。
現時点でも口当たりの柔らかい果実味もあり、頑なな印象はありませんが、骨格や構成もしっかりとしているので、熟成という時の魔法を経て、より進化した姿を楽しみたい1本です。
自然農法で栽培されたブドウから自然酵母の力のみで発酵させ、厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰めに至るまで亜硫酸塩(酸化防止剤)の添加を行いません。