Benoît Camus – Chap.02

昨年と全く違うだろ。毎年同じようなものを作るのもつまんなくてね。みんなあれが好き!もうないのか!?もう作らないのか?とか聞かれるけど。

Benoît Camus / ブノワ カミュ

春の訪れと共に植物たちが元気です!

今年は桜の開花が早いと言います。

実際畑に出ていても、太陽の光をたっぷり浴びて植物たちが動き始めているのを感じます。

私たちは、自然派ワインと哲学や想いを共有する自然栽培野菜の販売もしています。

国内外の農家さんと言葉を交わしていく中で、実際に土に触れて植物を栽培したことがあるかどうかは大切です。と話す妻が、青果販売部門の担当で、畑担当でもありまあす。

元々インドアな私で、あまり手伝ってこなかったのですが、最近は重い腰を上げてステイホームでなまった体を動かすと、笑っちゃうぐらいの筋肉痛とリフレッシュした気分が味わえます。

かつてはいろんな飲食店の方が、畑に手伝いに来てくれました。 相変わらず鬱々とした気分が続きますが、体を思いっきり動かしたい方は、ぜひいらしてください。

さて、今日は、畑のど真ん中で暮らす吟遊詩人、ブノワ カミュに新ヴィテージのご紹介です。

陰鬱な気分の時にワインのリリースを見てもねぇ…ということも忖度して、色んな意味での春到来にあわせて、4ヶ月ほど寝かせてからのリリースです。

ボジョレーの吟遊詩人ブノワ カミュの2019年のワインたちは、力強くもみずみずしい味わいです!

今回リリースするのは、3種類のワインです。

そして毎度のことながら、まずはお詫びから。今回リリースのブノワのワインたちも前回同様に、エチケット(ラベル)を全て手作業で貼っているため(そして彼のオン・オフある人柄も存分に発揮され)ボトルによって、貼付作業中の汚れやズレ、ヨレなどが見られます。

ワインがいまだ贈り物などにも用いられるハレの飲み物である日本と、日々そこにあるのが当然といった具合のケの飲み物として消費される欧州の感覚の違いがあるのは大前提として、「日本人はいつもラベルのこと言うよね」と色んな造り手から言われるように、あくまで中身に価値を見出して手にとってもらいたいという想いもあり、新しいカルチャーを日本に定着させるべく、皆様のご理解とご協力をいただけますと幸いです。

もちろん全てがダメダメというわけでなく(過去にそういうい経験ありましたが…)、程度のキレイなものから選んで出荷させていただきます。つまりお早めにご注文頂いた方からラベルコンディションが良いものが届くというシステムになりますので、ご理解くださいませ。

そして!!ラベルが無い!とか、ぐちゃぐちゃで認識できない!とかは、当然出荷致しませんので、「ラベル全然気にしないよ!」という方は、ご注文時に一言お書き添えいただけると泣いて喜びます。

さてさて、やっとワインのご紹介です。まずは白ワインから。

+ 造り手詳細

Beaujolais Blanc Éveil Floral / ボジョレー ブラン エヴェイユ フローラル

ヴィンテージ:2019
タイプ:白
産地:フランス ボジョレー地方
品種:シャルドネ 100%

ブノワにとって、手掛ける畑の面積のほとんどが黒ブドウのガメイで、白ブドウのシャルドネが植わる畑はごくわずかです。なのでブノワの白ワインは、毎年思う存分買えるというわけにはいきません。

ブノワの手掛ける白ワインを初めて飲んだのは、以前ご紹介したマセラシオン(醸し)したシャルドネで造られたラ クレ デ ソル NV(2018)とヴァンジョーヌのように造ったロキシダピフでした。

ある意味、スタンダードな白ワインを飲んだことがなかったのですが、今回ご紹介する2019年のワインは、マセラシオン(醸し)も酸化的な環境での熟成も行っていない、スタンダードな白ワインです。

「昨年と全く違うだろ。毎年同じようなものを作るのもつまんなくてね。みんなあれが好き!もうないのか!?もう作らないのか?とか聞かれるけど。」

と、アーティストであるブノワらしいコメント。

実際ヴァイオリンやギターを操って音楽を奏でるブノワは、その即興性、インプロビゼーションをワインでも実践しているのだと思います。そして、それがまた、あらたなワクワクを生み出してくるのが、音楽(なかでもライヴ)そのものだと感じます。

そしてこのワインのリリースを春まで我慢?するの暗示していたのは、そのキュヴェ名。エヴェイユ フローラルは、「花のような目覚め」といった意味で、暖かな気温と長くなる日照時間で花々が咲き始めるこの季節にぴったりの名前です。

花の蜜を思わせる風味といきいきとボリュームのある果実味を感じるこのワインは、抜栓後の時間の経過と共に内側から膨大なミネラル感が溢れ出て、凛とした佇まいへと姿を変えていきます。

暑い夏に見舞われた年のこの地方の白ワイン(特に亜硫酸無添加)に見られるような、スモーキーさというか、ざらっとした感覚はなく、要素は多いもののびしっと1本筋が通っています。

現時点でも雰囲気のあるワインで、飲みすすめるのに抵抗はありませんが、かなりのポテンシャルを秘めたワインだとも感じるので、さっさと飲み干してしまうのは勿体ないと感じます。

瓶詰めに至るまで亜硫酸無添加で揮発酸や還元のニュアンスもなく、抜栓後1週間以上も厚みとみずみずしさは失われません。

双子のような赤ワインたち

そしてボジョレー地方といえば、圧倒的な栽培面積を誇るガメイです!今年もワインの仕上がりのイメージにあわせて「シャトー ルーラン」と「ル ヴァガボン」の2キュヴェがあります。

Château Roulant / シャトー ルーラン

ヴィンテージ:NV(2018)
タイプ:赤
産地:フランス ボジョレー地方
品種:ガメイ 100%

キュヴェ名のシャトー ルーランは「ルーラン城」という意味ですが、同時にエチケット(ラベル)に描かれているのは、畑のなかに置かれたキャンピングトレーラーとその前でギターを奏でる人物です。

これはまさに、ブノワ カミュ本人とその自宅の絵で、この場所がまさに、彼にとっては「城」なんだと思わせてくれる素敵なデザインだと思います。

この2018年のシャトー ルーランは、黒系果実の熟した味わいが特徴で、しっかりとしたボディに少々のスモーキーさ、鉄っぽさを感じるミネラルを備えたワインとなっています。

入荷直後の試飲では還元のニュアンスを感じましたが、現在(2021年3月)はその風味も溶け込み、果実感のなかに冷たさを感じさせるような、鋭さを感じさせてくれます。

厚みはしっかりとありますが、暴れたような雰囲気やぼてっと鈍重な雰囲気ではなく、地に足ついた重心の低さを感じる安定感ある味わいとなっています。

瓶詰めに至るまで亜硫酸無添加で造られたこのワインは、抜栓後4-5日たっても味わいは安定しており、長く楽しむことができます。

Le Vagabond / ル ヴァガボン

ヴィンテージ:NV(2019)
タイプ:赤
産地:フランス ボジョレー地方
品種:ガメイ 100%

もうひとつの赤ワイン、ル ヴァガボンは、「放浪者」の意味。ギターを手に、自分らしく自由に生きたいと願うブノワ カミュの想いが込められたワインです。

ブノワ カミュのワインは、どのキュヴェがどの区画のブドウからといったことや、造り方が固定されていません。その年々のできあがったワインのイメージに応じて、キュヴェ名をつけています。

このル ヴァガボンは、例年、しなやかさや柔らかさを備えた繊細な味わいのワインたちが、この名前でリリースされます。2019年もその例に漏れず、厚みのある果実味のなかにもしなやかさや柔らかな旨味が広がるタッチの軽さがあり、飲み心地の良いワインに仕上がっています。

もちろん、2019年は夏の熱波の影響もあり、例年よりも凝縮した黒系果実の風味を強く感じられ、ボディもしっかりとしていますが、体幹のしっかりとしたダンサーのような、安定感のある優美な躍動感を感じさせてくれるワインとなっています。

瓶詰めに至るまで亜硫酸無添加で造られたこのワインは、抜栓後4-5日たっても味わいは安定しており、長く楽しむことができます。