Xavier Marchais – Chap.04
ブドウで忙しくないときは羊の世話があるんだよ。だから僕らはずっとここにいるよ。
Xavier Marchais / グザヴィエ マルシェ
グザヴィエ マルシェ新天地での第2章
ロワールの土地を離れ、フィロキセラ流行によって荒廃したことからブドウ畑はほとんど存在しない地域となったかつてのリムーザン地方のクルーズ県に移住したグザヴィエ マルシェ。
新天地では、手元で熟成を続けているかつてのロワール時代のワインと南北のブドウ産地からの買いブドウでのワインを届けてくれています。
「〜の霊薬」と名付けられたエリクシールシリーズは、グザヴィエ マルシェ自身が育てたブドウから、その他の名前のキュヴェは、買いブドウから造られています。
今回のニューリリースは、
○ エリクシール ドゥ ジュヴォンス NV(21)
○ エリクシール ミステリュー NV (15-16)
● エリクシール ドゥ ロング=ヴィ(20)
● シフミ(21)
● トリュチュ ジャニーヌ(21)
の5種類です!
発泡感ありつつちょっとビターでちょっとレモンな大人の味わいのジュヴォンス
梅酒と紹興酒の中間のような香ばしい旨味の長期熟成ミステリュー
個人的には過去最高傑作のロング=ヴィ
フランス版のじゃんけんを意味するシフミはなんとカリニャン&グロロー
夜になるとパーティーガールに変貌するイカしたジャニーヌおばさんは、シラー、カリニャン、グロロー
詳しくは各ワインの紹介に譲りますが、グザヴィエ自身のブドウから造るキュヴェも買いブドウのキュヴェもどれもノリノリな味わいです。
ちょっと何か憑き物が落ちたというか、ワイン造りに関してももう一つ上の新しいステージに行った感があります。
お見逃しなく!
アンジュでは自分の理想をかなえるには限界がある
ロワール地方アンジュ地区で長年自然派ワイン造りを行っていたグザヴィエ マルシェが、ある日突然、かつてのリムーザン地方の村に移住した…という話は以前もお伝えした通りです。
グザヴィエが移住したクルーズ県は、陶器で有名なリモージュの北東の地域で、フランスで2番目に人口の少ない地域と言われています。
人口が少ないという点から想像できるように、産業は限定的で畜産と手工業が主な産業となっています。このクルーズ県の農業は、ウシ(リムーザン牛)の飼育が多く、ブタやヒツジも飼育されています。
そして気になるブドウですが、リムーザンはフランス南半分で最もブドウの木の少ない地域と言われ、その一部のクルーズ県も、フィロキセラ流行によって荒廃したことからブドウ畑はほとんど存在しない地域となっています。
そんなブドウがないクルーズ県に移住したグザヴィエ マルシェ。
彼はこの土地で何をしたかったのでしょうか。
それは、ワイン造りだけでは完結しない、次世代のための大地を育むという仕事です。
ロワールのアンジュ地区に足を運んだことがある人は、覚えていらっしゃるかもしれませんが、アンジュ地区は見渡す限りブドウ、ブドウ、ブドウです。
ブドウ畑の面積は20,300haにも及び、生産量は940,000hlとフランスで5番目に大きなブドウ生産県と言われています。
この地域の畑は比較的安価なため、新たに自然派ワイン造りに挑戦しようという人にとっては、挑戦しやすい場所でした。
グザヴィエ マルシェも異業種からの転職し、スタートしやすアンジュの地で自然派ワイン造りをスタートしました。この地でブドウを育て、また新たに挑戦しようとする若者たちのためにコミュニティを作り、働きながら学べる場も用意しました。
しかしグザヴィエが、自身の理想を突き詰めていくなかで、この密集したアンジュの地では、ナチュラルなブドウ栽培には限界があるのではと考えます。
そう、高密度なブドウ畑だけでは生態系を作ることができないからです。
そこで一念発起したグザヴィエは、かつてブドウは栽培されてはいたものの、現在はほぼ消滅したクルーズ県に移り住みます。この地でヒツジを飼いはじめ、ブドウだけでないあらゆる樹や植物を育て、生態系が調和したなかでのワイン造りに再挑戦しました。
といっても、植樹した木からブドウの実が収穫されるのは何年も先のことで、彼の理想が完成するのは、もしかしたら次の世代かもしれないという壮大な挑戦です。
ワインを造るための畑仕事だけでないグザヴィエからは、「今ちょうど羊の出産シーズンなんだ」とか「セラーの壁を伝統的な土壁で塗っているよ」とか「新しい樹を植えるのに大忙しだよ」と、ブドウやワインに関してではないニュースがよく届きます。
そんな話をすると、グザヴィエ マルシェはワイン造りやめちゃったの?と思われるかもしれませんが、ご安心ください。
植樹したブドウが育つまでは…と彼がかつていたロワール地方の造り手からや、近くなった南西地方やラングドック・ルーション地方の造り手からブドウを買ってワインを造っています。
そして、ただの買いブドウでのワイン造りにとどまらないのがグザヴィエ マルシェです。
ロワールのグロローと南フランスのカリニャンやシラーをアッサンブラージュ(ブレンド)することで、明るさと奥深さを兼ね備えたワインを誕生させました。
そして、まだ一部は自分自身の畑であったブドウから造ったワインも熟成され、時を待っていたりもします。
今回は、グザヴィエ マルシェの第2章となるワインのご紹介です。
NEW RELEASE
Elixir de Jouvence / エリクシール ドゥ ジュヴォンス
ヴィンテージ:NV (2021)
タイプ:白
産地:フランス ロワール地方
品種:シュナン ブラン 100%
おなじみ「若さの霊薬」と名付けられたエリクシール ドゥ ジュヴォンス。2021年の夏に新天地に移住したグザヴィエ マルシェですが、この記念すべき年のブドウはロワールで収穫し、新しい拠点に運んで醸造されました。
深いゴールドの色調が印象的なこのワインは、抜栓直後は少し発泡感がありますが、スパークリングワインを意図したものでなく、あくまで白ワインです。
しっかりとドライな味わいに、蜂蜜や燻製のような香ばしいフレーバーとパイナップルやレモンといった様々なフレッシュな風味が感じられます。濃厚な味わいのようでいて、どこかクリーンで清々しい味わいでもあり、気持ちをすっきりとリフレッシュしてくれる絶妙なバランスです。
グザヴィエ マルシェが手掛けるワインですので、自然酵母のみで発酵させ、厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰めに至るまでもちろん亜硫酸塩(酸化防止剤)無添加で造られています。
Elixir Mysterieux / エリクシール ミステリュー
ヴィンテージ:NV (2015-16)
タイプ:白
産地:フランス ロワール地方
品種:シュナン ブラン 100%
エリクシール ミステリュー「神秘の霊薬」と名付けられたワイン。Mystérieux のはずがエチケット(ラベル)の表記が、Mytérieux となっているのはご愛嬌。
シュナン ブランを用いて造られた白ワインをウイヤージュ(熟成中に目減りしたワインを補う作業)を行わずに酸化的な環境で熟成させたワインに収穫時期を遅らせた遅摘みのワインとアッサンブラージュ(ブレンド)し、長期の熟成を重ねたワイン。
色調は深い褐色で、長期熟成を経た梅酒や紹興酒のような甘い香りと若干の揮発酸のニュアンスがまず感じられます。口に含むと、香りほどには甘さはなく、濃厚な旨味と骨格、ミネラル感のそろったややドライな味わいです。
上質なシェリーやウィスキーのようなニュアンスがありつつも、飲み心地は軽快で身体に染み込んでいくような滋味深い味わいです。
八角を効かせた豚の角煮や焼いたリンゴ、大粒のカシューナッツなどとの相性が良さそうなワインです。
グザヴィエ マルシェが手掛けるワインですので、自然酵母のみで発酵させ、厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰めに至るまでもちろん亜硫酸塩(酸化防止剤)無添加で造られています。
Elixir de Longue-Vie / エリクシール ドゥ ロング=ヴィ
ヴィンテージ:NV (2020)
タイプ:赤
産地:フランス ロワール地方
品種:カベルネ フラン 100%
「長寿の霊薬」と名付けられたエリクシール ドゥ ロング=ヴィ。あくまで個人的な評価ですが、グザヴィエ マルシェが手掛けてきた赤ワインのなかで、過去最高傑作なのではと思う仕上がりがこの2020年です。
いつもより鮮やかな色調で、華やかさと艶っぽさのある香り。口当たりは優しくて、じわっと果実味が広がるみずみずしい味わい。カベルネ フランという品種で、ここまで鮮やかで妖艶な風味を引き出したワインは過去に経験がなく、なぜこのような表現ができたのかとただただ驚かされるワインです。
もちろん、芯の強さや骨格もしっかりと定まっていて、これから熟成を経てどう化けていくのかも楽しみな1本です。
許されるなら全てのボトルを個人的にストックしておきたい…そう思わせてくれたグザヴィエ マルシェのマスターピース。
グザヴィエ マルシェが手掛けるワインですので、自然酵母のみで発酵させ、厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰めに至るまでもちろん亜硫酸塩(酸化防止剤)無添加で造られています。
Chifoumi / シフミ
ヴィンテージ:NV (2021)
タイプ:赤
産地:フランス ヌーヴェル=アキテーヌ地方
品種:カリニャン、グロロー
シフミはフランス版のじゃんけんの事で、語源は日本語の「一(ひ)二(ふ)三(み)」だとか。ワインは大人の男の反省とはかけ離れた子供っぽいもので、楽しくて、直接的で、何も考えずただ飲む瞬間を楽しめばいいものだという意味が込められています。
気になる味わいですが、まず印象的なのは、リリースのこのタイミングから、すでに外交的でご機嫌な印象を与えてくれます。色調は、深い赤色で、ちょっとした発泡感も感じますが、全体として非常に華やかで鮮やかな風味です。黒い果実や火山のようなニュアンスが感じられる香りに、山桃やスモモの熟した果実味が加わります。妖艶で魅惑的な味わいですが、香りから塩味を感じるミネラル感がバランスをとっています。料理の香りとも調和し、表現が難しいほど複雑な味わいでありながらもクリアな仕上がりです。
南フランスのカリニャンとロワールのグロローをアッサンブラージュ(ブレンド)した野心的なワインで、自然酵母のみで発酵させ、厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰めに至るまでもちろん亜硫酸塩(酸化防止剤)無添加で造られています。
Tortue Jeanine / トリュチュ ジャニーヌ
ヴィンテージ:NV (2021)
タイプ:赤
産地:フランス ヌーヴェル=アキテーヌ地方
品種:シラー、カリニャン、グロロー
キュヴェ名のトリュチュ ジャニーヌは、Tortues Ninja(ニンジャ タートルズ)というアニメにちなんだフランス語のダジャレで、Tante Jeanine(タント ジャニーヌ)=ジャニーヌおばさんという表現から名付けられています。
ジャニーヌおばさんは、「退屈でありきたりだと思うおばさんが、夜になると気立てがよくて活発なパーティーガールに変わるような、非常に意外性のあることがある」ということを表現しています。ここから転じて、このワインも見かけによらないよというメッセージが込められています。
グラスに注ぐと、深みのあるルビーが印象的です。 香りには、 黒い果実やスパイスの香りが豊かで、還元香や揮発酸は感じられません。タンニンはしっかりとありますが、しなやかで細やか、果実味の甘さとミルキーさがバランスよく溶け合っています。青っぽさもなくジューシーでグビグビ飲めるワインですが、余韻も長く続きます。
アバンギャルドで、主張が強そうな見た目のワインですが、実際は鮮やかで素直な味わいの赤ワインで、明るく楽しめる一本です。
南フランスのシラーとカリニャンにロワールのグロローをアッサンブラージュ(ブレンド)した野心的なワインで、自然酵母のみで発酵させ、厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰めに至るまでもちろん亜硫酸塩(酸化防止剤)無添加で造られています。