Le Vin à Poil “Xavier Marchais” – Chap.05

グザヴィエ マルシェとモルガンヌ テシエ

私にとってのこのワインは、本当に好きな人と一緒にいるときに開けるべきものなの。

Morgane Tessier / モルガンヌ テシエ

ワインの造り手を紹介する際には、その造り手個人の名前を取り上げる場合もあれば、いわゆるワイナリーの名前で紹介する場合もあります。

この使い分けに関してはまだ悩んでいるのですが、基本的には個人の名前を前面に押し出してご紹介しています。

それは、もしどこかで、皆さんが大好きな造り手に出会った時に「こんにちは、〜さん」と話しかけられるようにするためだったりします。

しかし、造り手の人生もまた時とともに変化します。

それに伴って、これまであまりご紹介してこなかったワイナリーの名前をお知らせする必要が出てくることもあるでしょう。

これまで、グザヴィエ マルシェとだけ紹介していた今日の主役たちもそのひとつ。

今は、グザヴィエ マルシェとそのパートナーであるモルガンヌ テシエが、二人三脚でワイン造りにあたっており、ロワールからリムーザンへの移住にともなって、新しいドメーヌ名として、”ル ヴァン ア ポワル” を選択しました。

”ル ヴァン ア ポワル” とは『裸のワイン』という意味です。

ブドウだけじゃない、生態系すべてを詰め込んだワイン

グザヴィエとモルガンヌ

2人が選んだ ル ヴァン ア ポワルというドメーヌ名には、飾りっ気のない自然そのものをボトルに詰め込みたいという想いが見て取れます。

そもそもある程度の成功を収めていたロワール地方のアンジュから、ブドウ畑がほとんどないリムーザン地方に移住したのも、何万haものブドウ畑が広がるアンジュの中では、彼らが理想とする生態系を作ることが不可能だと感じたからです。

言い換えれば、ブドウだけを自然に育てていても、その生命としての本当のエネルギーを引き出すことはできず、純粋な自然の恵みをボトルに詰めることは不可能だと考えたのです。

この思想的影響の一部は、日本の農業家であり哲学者でもある故 福岡正信氏から得ていて、生命の共生関係、競争関係のなかで、その本来の力を解き放とうとしました。

そしてこの新しい物語は、まだ開演前です。

植樹したばかりのブドウは、残念ながら数年間はワインを造ることができません。数年して実がなったとしても、ブドウの樹が成熟するのには、さらに10年以上の年月が必要です。

自分たちの生きている間には完成しないであろう、生態系つくりを2人は毎日幸せそうに取り組んでいます。

途方もない仕事をひとつひとつ積み重ねながら、明るく生きている2人の暮らしは、彼らが手掛けるワインのキャラクターとして、しっかりと映し出されています。

しばらくは自分たちの育てたブドウではなく、買いブドウでのワイン造りが主となりますが、不思議と2人の想いと生き様が、ワインからも感じられるのです。

2人の愛が詰まったワイン

今回ご紹介するのは、

決して出会わないはずの南仏とロワールが出会った新感性のワイン
ラ パット フォル 2021

ロワール時代の最後のヴィンテージで最高傑作
エリクシール ドゥ トレ ロング ヴィ 2021

です。

今回からのはじめての試みで、動画で造り手の紹介やリリースするワインのご紹介をお届けしています。

これらがどんなワインなのか…は、ぜひ以下の動画をご覧ください。

動画をご覧になれない方のために、それぞれのワインの概略を簡単にご紹介すると。

ラ パット フォル 2021

ラ パット フォルとは「くるくる動く脚」のことで、2人の愛犬がはしゃいで脚をケガしたエピソードから名付けられています。

決して出会わないはずの南仏のシラーとアンジュのグロローのアッサンブラージュ(ブレンド)で、スパイシーさと飲み心地の良さが同居する新しい感性のワインとなっています。

エリクシール ドゥ トレ ロング ヴィ 2021

「実はあまり好きでなかったの…」とモルガンヌの衝撃の告白があったのが、カベルネ フランという品種。そのカベルネ フランから、過去最高傑作と言えるワインが誕生。

軽快でフレッシュな飲み心地と溢れんばかりのサクランボやイチゴの風味、それでいて奥行きと複雑さもあり、思わず声が漏れるバランス。

造り手が「本当に好きな人と一緒にいる時に開けるワイン」と話す特別なワインです。

+ 造り手紹介

La Patte Folle / ラ パット フォル

ヴィンテージ:NV (2021)
タイプ:赤
産地:フランス リムーザン地方
品種:シラー、グロロー

ラ パット フォルとは「くるくる動く脚」のことで、リムーザンへの移住直前に愛犬がはしゃいで脚をケガしたエピソードから名付けられています。

移住により畑を手放したグザヴィエたちが、買いブドウから造るワインで、南フランスのシラーとかつていたロワール アンジュのグロローをアッサンブラージュ(ブレンド)して造っています。

熟成中は名前のように「あっちいったり、こっちいったり、ロックンロールなワイン」だったようですが、最終的はシラー由来のスパイシーさとグロロー由来の飲み心地の良さを備えた、新しい感覚のワインとなりました。

造り手いわく、まさに南と北の間のような絶妙なバランスのワインとのことで、サラダ、バジル、モッツァレラチーズ、ニンニクを擦ったパンやブルスケッタなどシンプルな料理と抜群な相性です。

このワインは、自然酵母のみで発酵させ、厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰めに至るまで亜硫酸塩(酸化防止剤)無添加で造られています。

Elixir de Très Longue Vie / エリクシール ドゥ トレ ロング ヴィ

ヴィンテージ:NV (2021)
タイプ:赤
産地:フランス リムーザン地方
品種:カベルネ フラン 100%

「超長寿の霊薬」と名付けられたエリクシール ドゥ トレ ロング ヴィ。グザヴィエたちが以前所有していたロワール地方アンジュの畑のカベルネ フランから造られるワインであり、その最終ヴィンテージ。

そしてこのワインは、造り手自身も認める最高傑作となりました。

実はあまり好きでなかった…というカベルネ フランを圧搾の際に果汁の比率を多くして、タンニンを抽出しすぎないようにすることで、いきいきとした果実のアロマをたっぷりと引き出すことに成功しました。

軽快でフレッシュな飲み心地と溢れんばかりのサクランボやイチゴの風味、それでいて奥行きと複雑さもあり、思わず声が漏れるバランスのワインです。

造り手が「本当に好きな人と一緒にいる時に開けるワイン」と話す特別なワイン。ぜひ大切な仲間や友人、家族と一緒に。