Benoît Camus – Chap.04

あらゆるものを自分で修理するブノワのセラーには工具が溢れている

カートンなんて値上がりした上に薄くなってるんだぜ!

Benoît Camus / ブノワ カミュ

確固たる軸を持ったミニマリスト

何が必要で、何が不要か。わかっているようでわからなくなるのが現代社会。そんな現代社会にあって、何がほしいのか、どう暮らしたいかを知り、自分の確固たる軸を持ってミニマルに生きているのが、フランス ボジョレー地方の造り手、ブノワ カミュです。

電気も水道もない畑の脇にトレーラーハウスを置いてくらし、バイオリンやギターを奏でて過ごす姿は、現代の吟遊詩人です。

今で言うミニマリストの暮らしを地で行ってるブノワにとってのたまの楽しみは、バイクに乗ること。そんなバイクや車も、かなりの年季ものに見えます。

「別に今すぐにキレイな家に住みたいとは思ってない。家賃もかかるしね。まあその時が来たら考えるよ。ワインの値段もあげないとね。」

笑顔で、冗談っぽく話していますが、これが冗談でないのがブノワ。欲しいものが出てきたら、躊躇なく値段を上げてくると予想しています。

「俺のワインは安いだろ?」

ブノワ カミュと言えば、彼が重要と判断しているポイントに関しては、類まれな感性と集中力で磨き上げ、本質とは無関係と判断している部分は、とことん無頓着という白黒はっきりした性格。

ブノワのワインの表現力は、贔屓目なしに見ても一級品ですが、その品質に対して価格が安いのも、メリハリのはっきりした彼の意思と意図のあらわれだったりします。

いつも、ちょっといたずらっ子っぽい笑顔を見せながら「俺のワインは安いだろ?」と誇らしげに断言するのが常ですが、「ワインが身近なものであるべき、もちろん味わいは妥協しない」という信条を実践しているからこその言葉です。

とはいっても、日本の比ではないペースでインフレが進んでいたフランスで、燃料費やボトルやカートン(段ボール箱)などの資材費も高騰しています。

「カートンなんて値上がりした上に薄くなってるんだぜ!」

と日本のスナック菓子のような話を聞かされつつ、ブノワもワインを値上げしました。が、その額なんと0.5ユーロ。仕入れる側が思わず心配になります。

息子とバイクを修理する姿から見る逞しさ

ある訪問時、セラーで試飲をしていると「今日はこの後、息子が来るんだ」とブノワ。

なんでも息子さんもバイク乗りで、そのバイクに修理が必要とのこと。その修理を二人で一緒にやるのだとか。

息子のバイクを一緒に修理するブノワ

親子でバイクという共通の趣味があることや、息子さんから見ても破天荒であろう父親を頼って、こうして時間を過ごしている姿を眺めていると、なんとも暖かい気持ちにさせてもらえます。

そんな息子さんが、ブノワに手渡したものがありました。
それはトラクターの修理部品。

「自分で修理すれば、部品代だけですむだろ。こういうのがワイン造りにおいて大事なんだよ。」

ブノワの醸造所の壁にはぎっしりと工具や部品が並んでいます。趣味のバイクでもトラクターでも、こうして自分で修理やメンテナンスすることで、費用を抑えているのです。余計な出費はしない、だからワインの価格が抑えられる。そんな状況をブノワが誇らしく思うのは当然なんだと知りました。

相変わらずラベルは汚れていたり、破れていたり

器用で繊細な感性を持つブノワですが、本質とは無関係な部分は、とことん無頓着でもあります。その無頓着さが発揮されるのが、ワインのエチケット(ラベル)。

ラベリングマシンは使わず、1本1本、手作業で貼っているのですが、その作業中の汚れやズレ、ヨレ、破れが、ほぼすべてのボトルに見られます。

「ワインは中身が大事」と言わんばかりに、エチケット(ラベル)には無頓着なブノワ。しかし、そんな見た目や価格などの先入観を取っ払って、ワインの味わいに集中すれば、こんな表現力に満ちたワインがないと気づかされます。

ブノワカミュ

+ 造り手詳細

Éveil Floral / エヴェイユ フローラル

ヴィンテージ:NV (2020)
タイプ:白
産地:フランス ボジョレー地方
品種:シャルドネ 100%

キュヴェ名は「花のような目覚め」といった意味。ブノワにとって、手掛ける畑の面積のほとんどが黒ブドウのガメイで、白ブドウのシャルドネが植わる畑はごくわずかです。なのでブノワの白ワインは、毎年思う存分買えるというわけにはいきません。

2018年にはマセラシオン(醸し)や酸化的な環境での熟成を行った実験的な白ワインも造っていましたが、2020年はスタンダードな直接圧搾(ダイレクト プレス)の白ワインです。

塩っけの感じる豊富なミネラル感と香ばしさ、柔らかで広がりのある果実味を感じる人当たりの良い味わいで、前回のリリース時よりも人懐っこさが出てきました。端正でバランスのとれた味わいながら、奥深さもあり、じわりじわりと旨味が広がっていきます。

このワインは、ブドウの果皮等に自生する自然酵母での発酵を経て、厳密な清澄や濾過(ろか)を行わず、瓶詰めに至るまで亜硫酸(酸化防止剤)無添加で造られました。

抜栓後数日たってもバランスを崩すことなく、長く安定した味わいを楽しませてくれます。

Château Roulant / シャトー ルーラン

ヴィンテージ:NV (2020-21)
タイプ:赤
産地:フランス ボジョレー地方
品種:ガメイ 100%

キュヴェ名のシャトー ルーランは「ルーラン城」という意味ですが、同時にエチケット(ラベル)に描かれているのは、畑のなかに置かれたキャンピングトレーラーとその前でギターを奏でる人物です。

これはまさに、ブノワ カミュ本人とその自宅の絵で、この場所がまさに、彼にとっては「城」なんだと思わせてくれる素敵なデザインだと思います。と同時に、伝統的なボルドーのワインが、そのエチケット(ラベル)にその荘園を管理する館(城)を描くことが多く、それへのオマージュだとも言えそうです。

今回のシャトー ルーランは、2020年ヴィンテージと2021年のワインをアッサンブラージュ(ブレンド)したというブノワらしい自由な発想のワイン。

この2つのヴィンテージは非常に対照的な年となっていて、暑く乾燥した2020年と、涼しいが湿度の高い夏であった2021年は、それぞれ凝縮したワインと軽やかで繊細なワインとなりました。この2つのヴィンテージの美点を掛け合わせ、弱点を補い合うようにという意図でブレンドされました。

結果として、意図通りのバランスの取れたワインとなっていて、2020年が骨格と凝縮感を2021年が酸としなやかな旨味をもたらしてくれていて、飲み心地の良いワインとなっています。

前回のリリース時との差は、ぐっと落ち着いて具合が増して、いきいきとした果実味の旨味が感じやすくなったこと。2つのヴィンテージの個性が時間をかけて統合され、複雑な表情になっています。

このワインは、ブドウの果皮等に自生する自然酵母での発酵を経て、厳密な清澄や濾過(ろか)を行わず、瓶詰めに至るまで亜硫酸(酸化防止剤)無添加で造られました。

抜栓後数日たってもバランスを崩すことなく、長く安定した味わいを楽しませてくれます。

Vagabond / ヴァガボン

ヴィンテージ:NV (2022)
タイプ:赤
産地:フランス ボジョレー地方
品種:ガメイ 100%

ヴァガボンは、「放浪者」の意味。ギターを手に、自分らしく自由に生きたいと願うブノワ カミュの想いが込められたワインです。

ブノワ カミュのワインは、どのキュヴェがどの区画のブドウからといったことや、造り方が固定されていません。その年々のできあがったワインのイメージや顧客の要望に応じて、キュヴェ名をつけています。

今回のヴァガボンは、暑く乾燥した夏に見舞われた2022年産のガメイで造られたキュヴェです。暑い年の特徴であるアルコール度数の高さ、果実味の凝縮感、ボリューム、タンニンの深さなどが特徴です。

現時点では、極僅かに還元的なニュアンスもありますが、グラスでのスワリングですぐ消えるレベルで、むしろこの酒質の強さがワインの揺るぎない安定感につながっています。紫系果実のコンフィのような充実した果実味とスパイシーさ、余韻の柔らかさと複雑味があり、将来が楽しみなワインです。

このワインは、ブドウの果皮等に自生する自然酵母での発酵を経て、厳密な清澄や濾過(ろか)を行わず、瓶詰めに至るまで亜硫酸(酸化防止剤)無添加で造られました。

抜栓後数日たってもバランスを崩すことなく、長く安定した味わいを楽しませてくれます。