Jean Dreyfuss – Chap.01
この樹齢70年や80年のブドウたちは、どれも第二次世界大戦が終わった直ぐ後に、祖父と祖母が2人で植えたものなんだ。
Jean Dreyfuss / ジャン ドレフュス
アルザスの土地、歴史、人、だからこそ生まれるワインの姿
アルザスにおける自然派ワインの造り手といえば、個人的に特別に思い入れの深いブリュノ シュレール(ジェラール シュレール エ フィス)とパトリック メイエー(ジュリアン メイエー)のツートップがまず挙げられます。
近年は、ワインの味わいのバランスが整うようになるまで時間を要することの多い2人のワインですが、それでも尚唯一無二のエモーションを備えた特別なワインを生み出しえる数少ない造り手です。
この2名に加えて、まさに名家といえる歴史と伝統に裏打ちされた盤石な基盤と自然派ワインへの想いを持ったクリスチャン ビネールの3人が、アルザス自然派ワインの御三家となっています。
なかでもクリスチャン ビネールは、制御不能な自然の営みと対峙することに何年も忍耐を重ねるブリュノ シュレールとパトリック メイエーをよそに、着実に設備投資を重ねて、ワイン造りのブラッシュアップを続けています。
彼らのような偉大な先人たちがいるアルザスという土地で、心躍るような新しい造り手、新しいワインを見つけるというのは非常に難しいことであると考えていました。
実際「新しい」ということ自体には、価値があるわけではないので、無理して目新しさを追い求める必要はなく、シンプルに少し熟成したヴィンテージのシュレールのワインを飲めば良いと思ったりもします。
そんな状況下にあっても、皆様に自信を持って紹介したいと思える造り手に出会えることができました。
もちろん偉大なツートップや、御三家のメンバーと比較すると、経験面でも、そのワインの表現力でもまだまだ及ばない点はあると感じています。
しかし、実直かつ真摯な人柄と、家族が大切に守り続けてきた高いポテンシャルの畑、そして何より未来に無限の可能性を秘めた若さを備えたこの造り手とは、産声を上げたばかりの私たち be a good friend としても、長い時間軸で一緒に成長していけると確信するに至りました。
その大切な友人の名前は、ジャン ドレフュス。
1584年からヴィニュロン(ブドウ栽培者・ワイン生産者)としての歴史を持つ家に生まれ、それでも一時は継承が難しいとされた家業を自らの代で再興させ、永きに渡って続けることのできるワイン造りをと自然派ワインの道を歩みだした実直かつ真摯な人物です。
そのワインの味わいは、彼の誠実な人柄をピュアに表現しており、そのピュアさ故にアルザスという土地の恵まれたテロワールのポテンシャルを存分に引き出してもいます。
以前から私のことを知っている方は、私が好むワインのスタイルが、アーティスティックな表現力があったり、時にアバンギャルドですらある、ロックなワインであるというイメージをお持ちかもしれません。
しかし、今回ご紹介するジャン ドレフュスが当主を務めるドメーヌ フィッシュバックのワインは、どのキュヴェも真っ直ぐな味わいと芯の強さと透明感を兼ね備えたオーセンティックなスタイルです。
鮮やかな表現力を有するワインをジャズやロックのイメージと重ねるとすると、ドメーヌ フィッシュバックのワインは、クラシック音楽と重なります。バッハのような精微なイメージとモーツアルトのような遊び心が加わるような、そんなイメージです。
ワインの世界で、クラシックとかオーセンティックとか言うと古臭くつまらないイメージを持たれるかもしれませんが、キング クリムゾンのロバート フィリップが嫌ったというインプロヴィゼーション(いわゆる即興)を言い訳とした演奏能力の低さ(ロックコンサートではミスノートを出しても味だと言われるが、クラシックのコンサートでミスで音符を外すような演奏家はいない)の逸話に通じる部分があると思っていて、のびやかでナチュラルな味わいながら破綻のないワインを生み出すというのは高い集中力があるからで、これはこれで大きな魅力です。
彼との取引を始めるにあたり、訪問と試飲を何度か重ね、私たち自身も永くお付き合いができるかを真剣に検討しました。そしてお付き合いをお願いする決め手になったのは、彼の手がけるワインも、そして彼自身もこの僅かな期間であっても成長を止めなかったことです。
先述したように現時点でも皆さまに自信をもって勧められるワインばかりですが、素直な彼が、今後あらゆる経験を重ねていった未来においては、今以上の驚きをもたらしてくれるのではと大きな期待を頂いています。
例によって種類の多いのがアルザスワインの特徴ですが、そのなかでも私たちが実際に自宅で毎日飲める(飲みたいと思える)ような、ナチュラルな飲み心地のものをよりすぐって今回はご紹介しています。
唯一買いブドウ(友人がビオロジック栽培)を用いたスパークリングワインの「クレマン ダルザス」は、個人的に理想的だと考えるスパークリングワインの製法です、二次発酵時の酵母及び糖分添加をせずに、翌年に糖度の残ったモスト(ブドウ搾汁)を加えて瓶内二次発酵を促すスタイル(アルザスではこの手法を採用しているの自然派生産者が多い)。
細やかな泡立ちと爽快でいきいきとした果実味が楽しめる素晴らしい仕上がりで、このスパークリングワインがある程度コンスタントに確保できるようであれば、泡のチョイスにあまり悩む必要はないのでは!?と思っています。
エットニック(オーセロワ100%) 2017
ミュスカ 2018
ビートニック(シルヴァネール&シャスラ) 2018
のベーシックな白ワイン3種類は、瓶詰めに至るまで酸化防止剤としての『亜硫酸塩』無添加の抜群の飲み心地のワインたち。
ヨーグルトを思わせるような華やかな風味の「エットニック 2017」
50%マセレーション(醸し)50%直接圧搾のエキゾチックな「ミュスカ 2018」
ぴちぴちとした雰囲気に香ばしさと爽快さで走り抜ける「ビートニック 2018」
どのワインも普段の食卓で大活躍間違いなしです。
アルザスらしい長い名前で覚えにくいリースリング グラン クリュ アルテンベルク ドゥ ベルグビテン 2017は、今回入荷の唯一のグラン クリュ(いわゆる特級畑)。樹齢が若いこともあってリースリング特有の重厚感のある味わいというよりも、いきいきとした爽快な酸がありシャープなミネラル感が楽しめるワインに仕上がっています。おすすめは、きっちりと冷やして飲むこと。低い温度のほうが軽妙な飲み口が楽しめますし、それでいて味わいの表現が削がれることもありません。
赤ワインのピノ ノワール グラウレーベン 2017は、樹齢の高いブドウ樹から生み出され、非常に熟度が高く、黒いベリーのコンフィチュールのような果実味があり、それでいてしなやかな口当たりと華やかな余韻が楽しめる極上のバランスになっています。線の細いタイプではなく、オーベルニュ地方のワインのような「火」のニュアンスも感じられ、ピエモンテ地方のワインにも通じる密度があります。
特筆すべきはどのワインも非常に完成度が高く、不安定な要素が一切ない点です。抜栓後も数日にわたって味わいのバランスを崩すことなく、長い期間楽しむことができます。
アルザス自然派ワインのツートップの大ファンである私ですが、「家で飲まないワインは仕入れない」がコンセプトの be a good friend ですので、当然このドメーヌ フィッシュバックも自分たち自身が楽しめると確信してのご紹介です!
ぜひご期待ください。
Crémant d’Alsace Brut / クレマン ダルザス ブリュット
ヴィンテージ:NV
タイプ:泡
産地:フランス アルザス地方
品種:シャルドネ 60%、オーセロワ 40%
ビオロジック認証を取得している友人からブドウを買い入れて造った瓶内二次発酵タイプのスパークリングワイン。アルザスの自然派生産者の多くが採用している二次発酵時の酵母及び糖分添加をせずに、翌年に糖度の残ったモスト(ブドウ搾汁)を加えて瓶内二次発酵を促すスタイルで、酵母も砂糖も添加しないことから、自然派ワインの理念に沿ったスパークリングワインとしては理想的です。
シャルドネ主体ということもあり、トースト香を感じるような香ばしいタイプのスパークリングワインではなく、ブラン ド ブランのシャンパーニュを想起させるような、柔らかで丸みのある果実味と爽快な酸味とのバランスが心地良いワインに仕上がっている。繊細ながらもしっかりとした泡立ちがあり、気品ある満足度の高いワインとなっている。
Ethnik / エットニック
ヴィンテージ:2017
タイプ:白
産地:フランス アルザス地方
品種:オーセロワ 100%
エットニックは、微妙に綴りが異なりますが、エスニック(民族的・異国風)と意味を重ねて名付けられたと推測されます。実際にこのワインは、白い花を思わせる可憐な香りに、ヨーグルトを思わせるような、なめらか旨味と柔らかい酸味があり、どこかトロピカルで開放的なイメージを与えてくれます。決して甘みがあるわけでなく、果実味と酸味のバランスは秀逸で、その豊かな果実味が、スパイスを効かせたエスニックな食事にも相性がばっちりです。
このワインは、ビオロジックで栽培されたブドウを手摘みで収穫し、自然酵母のみで発酵。厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰め時に至るまで亜硫酸塩(酸化防止剤)も無添加で造られます。
Muscat / ミュスカ
ヴィンテージ:2018
タイプ:白
産地:フランス アルザス地方
品種:ミュスカ 100%
アロマティックなミュスカという品種の個性を引き出すために、およそ半分のブドウをマセレーション(醸し)をし、残り半分は通常の白ワインの製法と同じく直接圧搾したものを発酵させ、それらをブレンドして仕上げた白ワインです。野花の蜜やフェンネルなどのハーブを思わせるような香りがあり、 それでいて飲み口はすっきりとドライで、嫌味にならない程度のタンニン分がワイン全体の味わいを引き締めてくれます。四川系の辛味のある中華料理や、春の山菜のほろ苦さにも相性が良く、洋の東西を問わずあらゆる食事と良い相性を備えています。
このワインは、ビオロジックで栽培されたブドウを手摘みで収穫し、自然酵母のみで発酵。厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰め時に至るまで亜硫酸塩(酸化防止剤)も無添加で造られます。
BeatN’Hic / ビートニック
ヴィンテージ:2018
タイプ:白
産地:フランス アルザス地方
品種:シルヴァネール、シャスラ
ドメーヌ フィッシュバックのワインは、クラシック音楽のようなスタイルと紹介しつつも、ビートニックは、そのワインの名前からもエチケット(ラベル)のデザインからも、 ニューウェイヴやハウスといったビート(拍・打点)を感じる音楽のイメージと重なります。ビートニク(Beatnik)とは元来、第二次世界大戦後のアメリカの文学界で異彩を放ったグループの思想や行動様式に影響を受けた人たちのことで、特にヒッピー文化で受け入れられていたと言います。
そんな自由な雰囲気を味わいからも感じられ、少しぴちぴちとした口当たりがあり、同時に香ばしさと旨味の広がりを感じます。全体のバランスとしては酸もあり爽快なワインですが、メリハリの効いた果実味が、飲み飽きさせない魅力となってます。
このワインは、ビオロジックで栽培されたブドウを手摘みで収穫し、自然酵母のみで発酵。厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰め時に至るまで亜硫酸塩(酸化防止剤)も無添加で造られます。
Riesling Grand Cru Altenberg de Bergbieten / リースリング グラン クリュ アルテンベルク ドゥ ベルグビテン
ヴィンテージ:2017
タイプ:白
産地:フランス アルザス地方
品種:リースリング 100%
ドメーヌ フィッシュバックが誇る、グラン クリュに格付けされた恵まれたテロワールに植わるリースリングを用いて生み出されるワイン。樹齢が比較的若いこともあって、リースリング特有の重厚感のある風味は(提供温度によるものの)控えめで、シャープなミネラル感と伸びやかな酸味、フォーカスのしっかりとあった果実味、奥に秘めた鉱物的なニュアンスが絶妙にバランスしています。
備えている風味は強く、現時点であればきっちりと冷やし目の温度にして飲むことで、爽快さが全面に出て、クリーンかつドライな食事を選ばずに楽しめるバランスとなっています。
個人的なオススメは、胡麻やごま油を使った料理で、例えば、蒸して裂いた鶏胸肉と新玉ねぎやトマト、パクチーなどを黒酢かバルサミコ酢、醤油、ごま油のドレッシングであえて炒りゴマをふりかけたサラダなどが最高です。
このワインは、ビオロジックで栽培されたブドウを手摘みで収穫し、自然酵母のみで発酵。厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰めの際に極少量の亜硫酸塩(酸化防止剤)のみを加えて造られます。
Pinot Noir Graureben / ピノ ノワール グラウレーベン
ヴィンテージ:2017
タイプ:赤
産地:フランス アルザス地方
品種:ピノ ノワール 100%
ドメーヌ フィッシュバックが出かけるピノ ノワールは、現当主であるジャン ドレフュスの祖父母が、第二次世界対戦の直後に植樹したもので、その樹齢は70年程に達します。 この高い樹齢と恵まれたテロワールによって、非常に高い熟度が得られ、黒系果実のコンフィチュールのような濃密な果実味があり、それでいてしなやかな口当たりと華やかな余韻が楽しめる極上のバランスになっています。
いわゆるピノ ノワールという品種から想起される線の細いタイプではなく、フランス オーベルニュ地方の赤ワインに見られるような「火」のニュアンスを感じられたり、イタリア ピエモンテ地方の赤ワインにも通じるギュッと詰まった密度があります。
このワインは、ビオロジックで栽培されたブドウを手摘みで収穫し、自然酵母のみで発酵。厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰めの際に極少量の亜硫酸塩(酸化防止剤)のみを加えて造られます。