Domaine Fischbach “Jean Dreyfuss” – Chap.09

酷暑の乾燥でひび割れた畑

夏はお祭りの準備で忙しくてね…え?もう何年も前から毎年やっているよ。

Jean Dreyfuss / ジャン ドレフュス

仲間がいなければ、未来は変えられない

フランスとドイツの国境のワイン産地、アルザス。

この地理的要因が、特徴的なワインを生み出し、また特徴的な文化も育んでいます。

個人的には、ちょっと保守的な人が多いのかな?という印象もありますが、それは実直で強い信念を持っているというのと裏表でもあったりします。

そんなアルザスにあっても、若い世代はまっすぐと次の未来を築こうとしていると感じます。ドメーヌ フィッシュバックのジャン ドレフュスもそんな若者の一人です。

家族や地域の伝統としてのワイン造りを尊重しつつ、これからやってくる破滅的な環境の変化に真正面から対峙する強さがあります。

フランスのワイン産地としては、高めの緯度(北)に位置するアルザスでも、ここ数年は熱波続きです。植物や大地へのストレスは大きく、それを癒やすタイミングもありません。

だからこそ環境保全型農業が重要であるし、そうした産品を支持してくれるコミュニティ作りが重要です。

記録的な熱波となった2023年の夏にジャンを訪ねた時、ファーストヴィンテージの時からの付き合いでしたが、この訪問で、はじめて知ったことがありました。

それは、彼が毎夏、自分の村で大きなワインと音楽のフェスティバル PINOT&SONO を主催していることです。

ドメーヌ フィッシュバックのジャンが主催するフェスティバルPINOT&SONO

トレンハイムは人口600人ほどの小さな村です。ここに1000人を超える人が、フェスティバルの際には訪れるのだと言います。

このPINOT&SONOというお祭りですが、ピノ ノワールをはじめとするブドウ品種を想起させるPINOTと音響機器や音から転じてDJ音楽を意味するSONOの組み合わせが名前になっており、地域の若者たちがナチュラル ワイン片手に飲んで踊ってという楽しそうなイベントです。

もちろん、楽しいだけでない目的も主催するジャンたちにはあったりします。

このイベントは、自分たちがどんな人物で、どんなことを考え、どんな仕事に取り組んでいるのか、地域の人に理解してもらう取り組みでもあるのです。

オンラインが発達した現代では、地域やリアルのコミュニケーションは相対的に減少します。そんな状況のなかでは、自分が何者であるのかを積極的に開示しなければ、その取り組み(例えば環境保全型の農業をしてワイン造りをしている)などは伝わりません。

未来を変える、社会を変えていくのには一人の力ではできませんし、多くの人の理解と共感が必要です。だからこそ、お互いがどんな人間であるかを知り合う場としても、このお祭りが重要なのです。

be a good friendの造り手たちには、同様の取り組みをしている造り手が多くいます。リムーザンに移住したグザヴィエ マルシェなんかも地元の人たちに開放したお祭りを催して、自分たちの取り組みを紹介しています。

彼らの姿を見て、私もこうしたコミュニケーションを深める場を用意しないとな…とプロジェクトリストが、またひとつ増えたのでした。

+ 造り手詳細

Crémant d’Alsace Brut / クレマン ダルザス ブリュット

ヴィンテージ:NV
タイプ:泡
産地:フランス アルザス地方
品種:シャルドネ 60%、オーセロワ 40%

アルザスではおなじみの「原酒となるワイン+翌年のモスト(ブドウ搾汁)」で瓶内二次発酵されて造るクレマン ダルザスは、スパークリングワインの造り方としてもっとも好みのスタイルで、ペティアンのような抜栓してみないと仕上がりがわからないギャンブル感もなく、シャンパーニュ他の糖分・酵母添加によって生まれる力強い泡立ちが、繊細なニュアンスをマスクしてしまうこともない、ピュアで生き生きとした味わいが魅力です。

ドメーヌ フィッシュバックのクレマンは、品種がシャルドネとオーセロワということもあり、いわばブラン ド ブランで、爽快さとキレのよい飲み口、余韻の柔らかな果実味が魅力です。

飲み飽きることもなく、飲み疲れることもない。アペリティフから前菜、魚料理とどんなお料理にも相性良く寄り添ってくれるワインです。

使用しているブドウはビオロジックによる栽培で、瓶内二次発酵に際しての糖分添加も酵母添加も行わずに造られたスパークリングワインです。酸化防止剤(亜硫酸塩)に関しては若干量添加されています。

また、抜栓後も長く安定した味わいを楽しませてくれるのも特徴です。

Muscat Ursprung / ミュスカ ウーシュプルン

ヴィンテージ:NV (2021-22)
タイプ:白
産地:フランス アルザス地方
品種:ミュスカ 100%

このミュスカ ウーシュプルンは、収量も少なく難しいヴィンテージとなった2021年と近年の定番となった異常な暑さと乾燥に見舞われた2022年をブレンドすることで味わいの調和と生産量を確保したワインで、使用しているミュスカの40%をマセレーション(果皮を果汁に浸漬)して造られました。

表示アルコール度数が10%で軽快なワインに思えますが、ミュスカらしい華やかなアロマにベルガモットや柑橘類、アールグレイを思わせる爽快な香ばしさが加わった透明感のある大人っぽい風味で、力強い香りとしっかりドライな飲み口、優しく広がるクリーンな果実味と豊かな表現を備えています。

ほろ苦さを楽しむ春の山菜やハーブを効かせた料理、セロリをたっぷりつかったエビ焼売などと楽しみたくなる味わいです。

このワインは、ビオロジックで栽培されたブドウを手摘みで収穫し、自然酵母のみで発酵。厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰め時に至るまで亜硫酸塩(酸化防止剤)も無添加で造られます。

他の多くのドメーヌ フィッシュバックのワインと同じく、抜栓後数日たってもバランスを崩すことなく、長く安定した味わいを楽しませてくれます。

Pinot Gris Weinbalg / ピノ グリ ヴァインバルク

ヴィンテージ:NV (2021-22)
タイプ:白
産地:フランス アルザス地方
品種:ピノ グリ 100%

このピノ グリ ヴァインバルクは、収量も少なく難しいヴィンテージとなった2021年と近年の定番となった異常な暑さと乾燥に見舞われた2022年をブレンドすることで味わいの調和と生産量を確保したワインで、使用しているピノ グリの15%をマセレーション(果皮を果汁に浸漬)して造られました。

まず印象的なのは、リッチさを感じる香ばしさがあり、味わいにも凝縮したブドウの厚みある果実味が感じられます。と同時に、クリーンで純粋さを感じる旨味もあり、二面性を持ったワインという印象です。

バランスとしては、いわゆるフレッシュさやフルーティーさはなく、大人っぽい落ち着きと成熟した果実味が楽しめるワインとなっています。

穴子の白焼きやむっちり甘い身のイカをフライにして、しっかりとレモンを効かせたものなどと相性が良さそうです。

このワインは、ビオロジックで栽培されたブドウを手摘みで収穫し、自然酵母のみで発酵。厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰め時に至るまで亜硫酸塩(酸化防止剤)も無添加で造られます。

他の多くのドメーヌ フィッシュバックのワインと同じく、抜栓後数日たってもバランスを崩すことなく、長く安定した味わいを楽しませてくれます。

Suff’Hic Rouge / スフィック ルージュ

ヴィンテージ:2021
タイプ:赤
産地:フランス アルザス地方
品種:ピノ ノワール 100%

アルザス地方といえばその主流は白ワインで、割合としては9割にも及ぶとか。その残り1割となる赤ワインは、ピノ ノワールを用いて造られます。

ドメーヌ フィシュバックにとってのスタンダードワインである「スフィック」の赤も、もちろんピノ ノワールで造られており、マセレーション(果皮を果汁に浸漬する作業)の期間をやや短くし、フレッシュさと飲み心地の良さを引き出すようにしています。

ちなみに「スフィック」は、「グビグビ飲めちゃう」のようなニュアンスの地元の言葉とかけて名付けられているそうです。

最近では珍しく涼しいヴィンテージとなった2021年のこのワインは、例年よりもボディは軽く、淡くチャーミングな優しいタッチの果実味とオーベルニュのガメイを思わせるような火山のニュアンスがほんのり感じられるバランスに仕上がりました。飲み口は軽快ですが、青さや薄さではなく、みずみずしい果実味を備えた旨味たっぷりの優しい味わいに仕上がっています。

このワインは、ビオロジックで栽培されたブドウを手摘みで収穫し、自然酵母のみで発酵。厳密な濾過(ろか)や清澄も行わず、瓶詰め時に至るまで亜硫酸塩(酸化防止剤)も無添加で造られます。

他の多くのドメーヌ フィッシュバックのワインと同じく、抜栓後数日たってもバランスを崩すことなく、長く安定した味わいを楽しませてくれます。